2023 Fiscal Year Annual Research Report
新奇酵素反応による細菌のプロテオスタシス制御:我々とは異質な酸化ストレス適応戦略
Project/Area Number |
20K15446
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Research Institution | Hyogo Prefectural Institute of Technology |
Principal Investigator |
今井 岳志 兵庫県立工業技術センター, その他部局等, 主任研究員 (30785241)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 酸化還元酵素 / 過酸化 / 老化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では各種の酸化ストレスに対して当該の酵素がどのような役割を果たすかを多角的に評価し、細菌の多様化に繋がった、我々とは異質な酸化ストレスへの 適応戦略を明らかにすることを目指している.本研究計画は①酵素反応における当該酵素の諸性質解明、②オーソログの活性確認と破壊株作製、③破壊株におい てタンパク質のアグリゲーションを定量、④進化生物学的な位置づけの解明、の4つの実施項目に分かれている.
これまでに①-③に関して概ね順調に研究計画を実施し、成果を得てきた.今年度は主に④に関連した研究を実施した.当該酵素のYjbIはバイオフィルム中に含まれるTasAなど、O2と接触する機会が多いタンパク質が過酸化の損傷を受け、連鎖的に重合してしまうのを防ぐ役割を持つことが示唆されている.すなわち、YjbIは過酸化したタンパク質上のアミノ酸残基を還元する酵素になるが、その電子供与体は不明なままであった.我々は、バイオインフォマティクス解析により、YjbIのホモログを持つグラム陽性菌に高頻度で保存されている機能不明なタンパク質を見出した.このタンパク質は呼吸鎖複合体に組み込まれているシトクロムと類似したアミノ酸配列を有しており、貫通型の膜タンパク質であることが推測された.このことから、YjbIへの電子供給の仕組みが、呼吸などと同様にNADHやキノン類からのリレーで、電子を最終的にこの呼吸鎖複合体アナログから細胞外のYjbIに受け渡している可能性が示された.
ここまでの本研究により、当該酵素の諸性質が示され、当該酵素のB. subtilisにおける酸化ストレス耐性への寄与を明らかにすることができた.特に老化との関わりも指摘されている過酸化によるタンパク質の変性に関して、細菌が独自の防御システムを有しているという内容は一定のインパクトを持っており、トップジャーナルの一つであるeLife (2022 Sep 20:11)に当該内容の投稿論文が掲載された.
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