2020 Fiscal Year Research-status Report
陸上植物に進化的に保存されたカルコン合成酵素の活性制御機構の解明
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20K15448
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
和氣 駿之 東北大学, 工学研究科, 助教 (10793705)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | フラボノイド / カルコン合成酵素 / カルコン異性化酵素類似タンパク質 / タンパク質間相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
フラボノイド生合成の初発酵素であるカルコン合成酵素(CHS)とその相互作用タンパク質であるカルコン異性化酵素類似タンパク質(CHIL)の相互作用界面を明らかにするため,CHS変異体を作製して酵母two-hybrid法およびバイオレイヤー干渉法による相互作用解析を行った.CHSが属するⅢ型ポリケチド合成酵素ファミリーには,CHSと配列相同性が高いにもかかわらずCHILと相互作用しないp-クマロイルトリ酢酸合成酵素(CTAS)やスチルベン合成酵素(STS)が存在する.そのため,CHS変異体はこれらCTASやSTSとの配列アレイメントをもとに作製した.相互作用解析の結果,CHSの基質ポケットの入り口周辺に変異を導入した複数のCHS変異体においてCHILとの相互作用が消失した.したがって,CHSの基質ポケット入口のCoA結合領域がCHILとの相互作用に重要であることが示唆された. また,CHILによるCHSのカルコン生成の活性化メカニズムを調べるため,CHSの反応阻害剤に着目して酵素機能解析を行った.CHSの反応阻害剤としては,アピゲニンおよびCoAを検討した.その結果,アピゲニンはCHSの主生成物であるカルコンおよび副生成物であるp-クマロイルトリ酢酸ラクトン(CTAL)の生成をともに抑制するのに対して,CoAはカルコンの生成のみを抑制することが示された.速度論解析により,これらの阻害形式はともに混合阻害であることが示唆された.この反応系にCHILを追加で添加すると,CHILはCoA阻害のみをある程度解消することが示され,CHS-CoAのKi値を大きくすることが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CHSとCHIL間の相互作用は弱く,相互作用に決定的なアミノ酸残基を同定することは難しいが,ある程度の相互作用領域を推定することができている.また,CHILの機能の発現にはCHSとの相互作用が重要であることも示された.また,CHSの反応により副次的に生じるCoAは,CHSのカルコン生成活性(環化反応)を抑制することが明らかとなり,CHILはこのCoAによる環化反応の抑制を抑えることでCHSの活性化に寄与することが想定できるようになった.
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Strategy for Future Research Activity |
CHSとCHILの相互作用界面の同定のため,クロスリンキング質量分析を行う.CHS/CHILを適切に架橋できるクロスリンカーの探索やクロスリンクされたペプチド分析系の最適化を行う.また,STS活性またはCTAS活性を有する変異型CHSに対するCHILの寄与を詳細に解析し,CoA阻害とCHILによる環化反応の活性化の関わりを明らかにする.
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Causes of Carryover |
2020年度の実験の多くは,すでに保有していた各種試薬,消耗品を使用したため次年度使用額が生じた.
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Research Products
(5 results)