2021 Fiscal Year Research-status Report
陸上植物に進化的に保存されたカルコン合成酵素の活性制御機構の解明
Project/Area Number |
20K15448
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
和氣 駿之 東北大学, 工学研究科, 助教 (10793705)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | フラボノイド / カルコン合成酵素 / カルコン異性化酵素類似タンパク質 / タンパク質間相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
カルコン合成酵素(CHS)とその相互作用タンパク質であるカルコン異性化酵素類似タンパク質(CHIL)の相互作用界面を明らかにするため,クロスリンカー試薬を用いてCHSとCHILを架橋し,架橋されたペプチドをLC-MSMSにより同定することでCHSとCHILの相互作用界面の同定を試みた.始めにクロスリンカー試薬の種類やタンパク質濃度,反応時間,用いるCHSおよびCHILの由来植物種の検討を行い,CHSとCHILが効果的に架橋される条件を探索した.SDS-PAGEにより架橋タンパク質を解析したところ,非常に低収率ながらCHSとCHILが1対1で架橋されたと推定されるタンパク質バンドを検出することができた.このタンパク質バンドをゲルから切り出した後,トリプシン処理を行いLC-MSMSにより架橋ペプチドを解析した.その結果,1対の架橋ペプチドが同定され,CHSとCHILの相互作用界面が推定できた. また,CHILによるCHSのカルコン生成の活性化メカニズムを調べるため,CHSとCoAの結晶構造を参照して,CoA結合に重要なアミノ酸残基にアラニンの変異を導入した変異型CHSを作製し,詳細な酵素機能解析を行った.3つのアミノ酸残基に着目してそれぞれの変異体を解析したところ,CoA感受性が増強された変異体,CHILによる活性矯正を受けなくなった変異体を取得することができた.各変異体の速度論解析から,CoA感受性が増強された変異体ではkcat値が大きく低下し,CHILの効果を受けなくなった変異体はkcat値およびKm値がともに大きく増強されたことが示された.これら結果から,CoA結合に関わるアミノ酸残基はCHSの酵素活性に大きく影響することが示された.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
CHSとCHILの相互作用様式の解析では,昨年度の変異体を用いたタンパク質間相互作用解析と今年度のクロスリンカーMSMSの実験によりその詳細が明らかになりつつある.AlphaFold2に作製したCHSとCHILの複合体モデルも参考にしながら,論文化に向けてその実態解明を進めている.CHILによるCHSの活性化機構の解析では,CoA結合サイトに着目したCHS変異体の速度論解析により様々な結果が得られたが,速度論解析の再現性に問題があり,さらなる検証が必要と考える.
|
Strategy for Future Research Activity |
AlphaFold2による複合体モデルを基により最適な架橋試薬を選定し,架橋ペプチドを明確に検出することで,相互作用界面を同定する.速度論解析においては,解析数を増やして結果の妥当性を評価する.
|
Causes of Carryover |
速度論解析の実験結果の再現性に問題があり,繰り返し実験を行うにあたり全体の進捗に遅れが生じた.2022年度は,結果をまとめて論文化と学会発表を積極的に行う.
|