2020 Fiscal Year Research-status Report
コレステロール輸送体ABCA1がもつ二つの機能の調節機構の解明
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20K15449
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小笠原 史彦 京都大学, 高等研究院, 特定研究員 (00847519)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ABCA1 / コレステロール / 細胞膜 / HDL |
Outline of Annual Research Achievements |
脂質輸送体ATP Binding Cassette A1 (ABCA1) は、HDL(善玉コレステロール)を産生する機能と細胞膜内層から外層へコレステロールを輸送(フロップ)する機能をもつ。HDL産生活性は細胞外へのコレステロールの排出を、コレステロールフロップ活性は細胞膜におけるコレステロール非対称性の変化をもたらす。しかし、それらがどのように調節されているのかはまだわかっていない。本研究では、ABCA1がもつ二つの機能がそれぞれ独立した機能であることを示し、どのように使い分けられているのかを明らかにする。 本年度は、ABCA1のコレステロールフロップ活性をHDL産生活性と区別して解析するため、コレステロールフロップ解析手法の改良を行った。本研究では、培養細胞にABCA1を一過的に発現させ、コレステロールプローブを用いたフローサイトメトリーによってコレステロールフロップ活性を評価している。ABCA1はFBSに含まれる脂質アクセプターに対してコレステロールを排出してしまうため、通常の培養条件ではコレステロールフロップ活性のみを発揮させることが難しい。トランスフェクション後、ABCA1が発現する前に無血清培地に交換することによって、コレステロールフロップ活性のみを発揮させることはできたが、この手法は細胞株によっては発現量および発現率を低下させてしまった。そこで次に、既知のABCA1阻害剤を検討したところ、HDL産生活性とコレステロールフロップ活性の両方を阻害する阻害剤を見出した。この阻害剤を用いて、ABCA1の発現量および発現率を損なうことなく、コレステロールフロップ活性のみを発揮させる実験系を確立した。これまでの手法では、ABCA1発現細胞と非発現細胞に対するコレステロールプローブ結合量の差は中央値で2倍程度であったが、この改良によりその差は10倍程度まで上がった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度は、ABCA1のコレステロールフロップ活性のみを評価する系の確立に成功した。これにより、ABCA1のHDL産生活性とコレステロールフロップ活性を横並びに解析する準備が整った。また、既知のABCA1阻害剤がコレステロールフロップ活性も抑えること、そして培地から阻害剤を除去することにより迅速にABCA1がコレステロールフロップ活性を取り戻すことがわかった。これにより、ABCA1によるコレステロールフロップ活性が細胞膜コレステロール非対称性に与える影響を経時的に観察することができ、今後の展開が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度の研究では、当初の予定通りABCA1によるHDL産生速度の解析を進める。さらに、コレステロールフロップ活性のみを損なった変異体(Okamoto BBB 2020)および初年度に確立したコレステロールフロップ活性のみを発揮した状態のABCA1を解析することにより、ABCA1の二つの機能に影響を与える因子の探索を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響で学会が中止、またはオンライン開催となったため。研究2年度目では、初年度に見出したABCA1 阻害剤を用いて新たな研究を試みる。
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Research Products
(2 results)