2021 Fiscal Year Research-status Report
コレステロール輸送体ABCA1がもつ二つの機能の調節機構の解明
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20K15449
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小笠原 史彦 京都大学, 高等研究院, 特定研究員 (00847519)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ABCA1 / コレステロール / HDL / 細胞膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
脂質輸送体ATP Binding Cassette A1 (ABCA1) は、HDL(善玉コレステロール)を産生する機能と細胞膜内層から外層へコレステロールを輸送(フロップ)する機能をもつ。HDL産生活性は細胞外へのコレステロールの排出を、コレステロールフロップ活性は細胞膜におけるコレステロール非対称性の変化をもたらす。しかし、それらがどのように調節されているのかはまだわかっていない。本研究では、ABCA1がもつ二つの機能がそれぞれ独立した機能であることを示し、どのように使い分けられているのかを明らかにする。 ABCA1は細胞膜上において二量体化することがわかっており、HDL産生活性との関連が示唆されているが、その詳細はまだわかっていない。またコレステロールフロップ活性との関連はまったく不明である。本年度は、ABCA1の二量体化と二つの機能の関連を調べるため、ABCA1二量体化を解析する手法を確立した。これまでABCA1の二量体化は一分子観察によって解析してきたが、この手法は解析に時間を要するうえ、観察できる時間が短い。そこで、より簡便に二量体化を解析するため、コイルドコイルラベル法を用いた。この手法では、コイルドコイルを形成して結合する二つの配列の内一つを目的タンパクに挿入し、一つを蛍光を付加した合成ペプチドとして後で加えることにより、目的タンパクを蛍光ラベルする。細胞膜上のABCA1の二量体化を解析するため、まずABCA1の細胞外ドメインにこの配列を挿入し、発現や機能、ラベル効率の良い場所を探索した。その後、FRETを起こす二つの蛍光をそれぞれ付加した合成ペプチドを同時に加え、ABCA1野生型およびATP加水分解活性欠損変異体を発現した細胞の細胞膜におけるFRETを観察した。その結果、ABCA1のATP加水分解活性依存的な二量体化を観察することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はABCA1の二量体化を簡便に解析する手法を確立した。ABCA1のコレステロールフロップ活性のみを損なった変異体(Okamoto BBB. 2020)では二量体化率が下がっていることが予備的な実験からわかっている。ABCA1の二量体化は二つの活性を調節する可能性のある重要な候補であるため、今後の展開に期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度の研究では、これまでに確立した手法を用いてABCA1の二つの機能の調節に重要な要素を調べていく。主に二量体化に焦点を当て、変異体や阻害剤などを用いてABCA1の活性を調節した際の変化を解析することによって、二つの機能の差別化および調節機構の解明を目指す。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響で国際会議へ参加できず、また国内学会もオンライン開催となったため。研究最終年度では、ABCA1の阻害剤や合成ペプチドを用いた研究を行っていく。
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