2020 Fiscal Year Research-status Report
Identification of target molecules of NIP/LATD involved in nodulation in Medicago truncatula
Project/Area Number |
20K15453
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
渡邊 俊介 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 基礎科学特別研究員 (20731384)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 根粒形成 / トランスポーター / NPF輸送体 / シングルセルメタボロミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
植物は多様な生理活性を持つ代謝物(機能性代謝物)を駆使することで複雑な変動環境にも柔軟に適応している。これら機能性代謝物が適切にその機能を発現するためには,輸送制御による作用部位での局所的な蓄積あるいは分散が重要なプロセスである。本研究では,近年,植物ホルモンなどの機能性代謝物の輸送に密接に関与する硝酸・小ペプチド輸送体ファミリー NPF に着目し,マメ科モデル植物タルウマゴヤシの根粒成熟を正に制御する NIP(MtNPF1.7)の輸送基質を同定するとともにその生理活性を評価する。本年度は,NPF タンパク質-リガンド相互作用検出系の確立,および NIP が発現する根粒メリステムの代謝物分析基盤の整備を進めた。前者については,組換え NPF タンパク質の熱安定性に化合物が及ぼす影響をシロイヌナズナ NPF4.6 とその輸送基質であるアブシシン酸(ABA)を用いて事前検証したが,リガンド結合の影響は検出できなかった。精製 NPF タンパク質の不安定な部分構造が検出の阻害要因として推測されたので,この代替法として split luciferase (split Luc) をベースとした生体膜上での NPF 構造ダイナミクス検出系の開発に着手した。後者については,当初の計画通りシングルセル代謝物分析を応用したシングルセルメタボローム解析技術を概ね確立し,これにより植物一細胞レベルでノンバイアスかつ大規模な代謝物解析が可能となった。本年度は根粒メリステムの代謝物分析に先立ち,この成果を国内学会誌に発表するとともに第43回日本分子生物学会で発表した。また,本研究の共同研究者(海外研究機関) とオンラインミーティングを行い,関連情報を共有するとともに今後の分析に用いる実験材料(NIP 変異体や NIP-GFP マーカーなど)の提供を受けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初の計画では,令和2年度中に NPF タンパク質-リガンド相互作用検出系を確立し,これを用いたケミカルスクリーニングに着手する予定であった。組換え NPF タンパク質の発現・精製系は予定通り確立できたものの,上述の通り,熱安定性を指標としたリガンド結合試験が機能せず大幅な予定変更を余儀なくされたため遅れが生じている。split Luc を用いた代替法では組換え NPF タンパク質精製を必要とせずサンプル調製も用意であるため当初の計画よりもさらにハイスループットなケミカルスクリーニングが可能となると期待できるが,新たな試験系の確立ということもあり時間を要している。他方,NIP が発現する根粒メリステムの代謝物分析についても緊急事態宣言に伴う出勤停止やシングルセルメタボローム解析用の質量分析計の移設,故障が相次ぎ,コンスタントな分析が困難な状態が長期間続いたため遅れが生じている。この様な状況下においても,シングルセルメタボローム解析法の開発や実験材料のタルウマゴヤシや NIP 変異体の確保に努め,質量分析計を再稼働でき次第分析する準備を整えた。これらの現状を当初の予定に鑑みると,計画に遅れが生じていると言わざると得ないが,今後の見通しも立ちつつあるので可能な限り早い段階で遅れを取り戻したい。
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Strategy for Future Research Activity |
上述通り,当初の計画から遅れが生じているが,NPF タンパク質-リガンド相互作用検出系を利用した NIP 高親和性化合物の単離ならびに NIP が発現する根粒メリステムに特異的に蓄積する代謝物の分析から NIP の輸送基質に迫るという基本方針に変更はない。前者については,split Luc をベースとした生体膜上での NPF 構造ダイナミクス検出系を可能な限り早い段階で確立する。既に開発には着手しており,NPF4.6-split Luc 融合タンパク質の発現は確認ができているので,令和3年度は ABA の結合に伴う NPF4.6 タンパク質構造変化を発光ベースで検出できるか検証を進めるとともに検出に必要な基質濃度の検討を行う。これと同時に NIP-split Luc 融合タンパク質発現系の構築も進め,NPF4.6 と ABA 相互作用が確認でき次第 NIP-split Luc を用いたケミカルスクリーニングを開始する。後者の根粒メリステム代謝物分析については,まずは野生型タルウマゴヤシの根粒メリステムメタボロームを,シングルセルメタボローム解析技術を用いて解析する。これに用いる質量分析計は既に再稼働しているので植物サンプルが準備でき次第分析を開始する。さらに,毛状根形質転換法により NIP-GFP を発現する根粒を作成し,GFP 蛍光が見られる細胞,即ち NIP 発現細胞を可視化し,NIP 発現細胞および非発現細胞のメタボロームを比較解析することで NIP が取り込む候補代謝物群を網羅的に探索する。さらに,NIP 変異体についても同様の解析を実施する。ここまでを令和3年度中に進める予定である。
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Causes of Carryover |
緊急事態宣言に伴う2ヶ月間の実験停止を受け,NPF タンパク質の大量精製および根粒メリステムのメタボローム分析を予定通り実施できなかったため,これに使用する試薬や消耗品の購入量が少なくなった。引き続きこれらの実験を実施するために差額分を令和3年度予算として計上する。
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