2020 Fiscal Year Research-status Report
未研究希少放線菌の二次代謝能の解明を通じた新規植物生長制御物質の探索
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20K15461
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
齋藤 駿 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 助教 (20846117)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 希少放線菌 / 二次代謝物 / 植物生長 / 植物病原菌 / Actinomycetospora / Couchioplanes |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで、ドラフトゲノム配列が公開されている希少放線菌12科72属を対象に二次代謝遺伝子の有無をAnti-SMASHによりin silico解析した。その結果、Micromonosporaceae科及びPseudonocariaceae科に属する希少放線菌が、高い二次代謝能を有していることを明らかとしていた。そこで、これらの科に属する希少放線菌19属について、培養・代謝物のHPLC解析を試みてきた。その結果、11属の希少放線菌に代謝物の生産を確認し、6属より代謝物の単離・構造決定を試みてきた。このうち、Pseudosporangium属放線菌株から同定した新規化合物及び植物病原菌であるGlomerella cingulate (イチゴ炭そ病菌) に対する強い抗菌活性については以前に論文報告している。その後、Couchioplanes属放線菌株から、新規不飽和脂肪酸5種、新規プレニルトリプトファン類縁体を同定することに成功した。さらに、トリプトファン類縁体は、レタス種子発芽試験により発芽促進活性を示した。また、Actinomycetospora属放線菌からは、インドール骨格の新規化合物の同定に成功しており、同試験により発芽阻害活性を示した。その他にも、いくつかの希少放線菌から様々なタイプの新規化合物を取得し、さらには、植物生長や植物病原菌に関与する二次代謝物の取得に成功し、希少放線菌のユニークな二次代謝能を見出すに至っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
希少放線菌19属について培養・代謝物のHPLC解析を試み、これまでにはあまり見られないユニークな化学構造を有する二次代謝物の獲得に成功している。さらには、「植物生長」や「植物病原菌」それぞれに影響を与える二次代謝物の取得にも成功している。実際、Couchioplanes属やActinomycetospora属放線菌株から新規化合物、及び、その植物生長に与える影響についての活性を見出し、論文投稿の準備を進めている。また、その他の希少放線菌についても引き続き論文発表の準備を進めており、希少放線菌二次代謝能の潜在性について報告していけると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、希少放線菌種から想定以上の新規化合物の取得に成功しており、ユニークな化学構造種が多く発見されている。そこで今後も、これまでと同様に、希少放線菌の二次代謝能について解析を継続する。ただし、これまでは「培養条件 (培地・温度等)」 については詳細な検討を行わなかったため、これらの項目についても検証を試みる予定である。また、これまでは、Micromonosporaceae科及びPseudonocariaceae科に属する希少放線菌に焦点を当ててきたが、その他の科についても広く解析を行いたいと考えている。そこで、新たに入手した植物由来の希少放線菌やin houseの放線菌ライブラリーからも、有望な放線菌種の探索を試みたいと考えている。 単離・構造決定した化合物については、これまでと同様に「植物生長」や「植物病原菌」に与える影響について評価する。有望な活性を示した化合物については、より高次な活性評価も検討していきたいと考えている。上記植物生長活性を示したCouchioplanes属放線菌から単離した化合物はインドール骨格の化合物であり、既知の植物ホルモンと同骨格にも関わらず活性は弱い。また、植物病原菌に対して抗菌活性を示したPseudosporamicin Aについては、細胞毒性も確認されており、より安全性の高い二次代謝物を探索したいと考えている。一方、Actinomycetospora属放線菌から発見したインドール骨格の新規化合物が、レタス種子発芽試験において赤斑点様の紋様を与えるという興味深い表現型を観察している。現時点において、この表現型が意味する現象は不明だが、植物生長の促進だけでなく、希少放線菌種と植物のコミュニケーションという観点から、このような表現型にも着目していきたいと考えている。
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