2020 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of mechanism of palmitic acid induced osteoporosis onset and development of prevention / defense method
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20K15484
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Research Institution | University of Human Arts and Sciences |
Principal Investigator |
岩崎 有希 人間総合科学大学, 人間科学部, 助教 (60762078)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 骨粗鬆症 / 歯周病 / LPS / パルミチン酸 / TLR |
Outline of Annual Research Achievements |
骨粗鬆症患者数は約1,100万人と推定されており、骨折による要介護人口は年々増加して大きな社会問題となっている。骨粗鬆症は様々な疾病への罹患が引き金となって破骨細胞が増加することが知られているが、原因はわかっておらず、その解明は急務となっていた。歯周病菌の産生するLPSが、その原因として注目されている中で、申請者は破骨前駆細胞RAW細胞がLPSではなくパルミチン酸により分化マーカーであるTRAPの産生、細胞の巨大化などを起こすことを見出した。申請者は、骨粗鬆症およびそれに伴う各種疾患において、パルミチン酸の増加、局在性の変化を伴うことを文献的に検証した。そこで本研究ではパルミチン酸による、破骨細胞形成の詳細を解析し、他の脂肪酸による拮抗作用を明らかにし、栄養学的な観点から予防、防御法を検討することを計画した。実験的にはRAW264.7にパルミチン酸を添加したところ、多核で巨大な破骨細胞への変化、RANKL、オステオプロテグリン発現亢進などが観察された。このことは骨粗鬆症にパルミチン酸が関与することを示している。昨年度はさらに実験を進め、同じく骨粗鬆症を誘導するLPSによる破骨細胞分化機序との違い、各種発症阻害薬剤の作用などを解析し、パルミチン酸による発症機構の一端を明らかにした。すなわちパルミチン酸とLPSが関連した相互作用を持つ可能性を見出した。阻害剤などの動向から、この反応にはTLRが関わっていることを示唆する結果も得られている。昨年度は新型コロナウイルスにより非常事態宣言が発出され、大学での長期にわたる実験の遂行が困難になった。細胞を扱う最低でも2ヵ月程度の持続的研究遂行が不可能となってしまった。新しい知見、TLR受容体の一部の発現について文献探索を行い、探索の結果を「生体防御機構におけるToll like receptor」として人間総合科学大学紀要に上梓した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
令和2年度の実験計画では、パルミチン酸、TNF-α、LPSを投与したRAW246・7細胞のたんぱく質、脂肪酸の変化などを、たんぱく質についてはリアルタイムPCRで、微量たんぱく質の同定には二次元電気泳動、RANKL,RANKの細胞での測定は蛍光抗体を用いて3波長倒立顕微鏡SX70(オリンパス光学=人間総合科学大学に設置済み)で行う予定であった。この内パルミチン酸により誘導される破骨細胞分化をTNF-α、TRAP、RANKL、TLRなどの発現をリアルタイムPCRで解析した。Preliminaryな結果であるがTRAPの産生は増加した。またTLR受容体の一部が増加していることも明らかとなった。実験当初はTLRの関与は考えに入れておらず予想外の結果となった。しかしながらプレリミナリーな結果ではあるが、TLRの量的変動だけでなく、阻害剤により分化が抑制されるなど想定外の結果が得られた。申請者は実験が細胞の異常については、いくつかの予備細胞を培養し即時に入れ替えられるようにし、たんぱく質解析に関しては最新の機器の導入、TLRの阻害剤、現在骨粗鬆症の治療に用いられているビスフォスフォネート、スタチンなどを用いて実験を行うなどの解決策を構築してあった。しかしながら前述したように新型コロナ感染症の蔓延で実験の遂行が困難となった。このことは申請時には考えられないことであり、上述の解決策は役に立たないこととなった。そこでTLRについて文献的に踏査を行い、令和3年度の実験に役立てようと考えた。TLRについて研究の歴史、TLR、IMDの情報伝達経路、TLRの構造と細胞内局在性、生物種での存在、内因性および外因性リガンド、TLRと関連する疾患、TLRのSNIPと疾患の関連性、TLRと栄養学的考察などについてまとめた。令和3年度ではこの結果を踏まえて研究を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナ感染症の蔓延で、令和2年度は十分な実験計画の遂行が難しい事態となった。しかしながらその中でも、パルミチン酸の作用について詳細な結果ではないが、パルミチン酸がLPSと何らかの関連性を持って骨粗鬆症の症状の増悪をしている可能性を示唆する事実が得られてと考えている。特にパルミチン酸あるいはLPSが作用した時に、機序に差があるのかないのかについては、これまで国内外の研究でも、全くわかっていない。そこで上記のパルミチン酸、LPSを投与したRAW246・7細胞で産生が亢進する、あるいは低下するたんぱく質について、リアルタイムPCRを用いて解析する。この時RANKL、TLR4, TLR2その他の細胞内情報伝達系のたんぱく質については、mRNAからcDNAを合成し、DNAマイクロアレイ法を用いて処理による発現量の変動を詳しく解析する。ただ令和3年度も感染症が継続する可能性があり、実験に十分な時間をかけることが可能かどうかは不明である。そのために今年度の実験では細胞実験を継続的、安定的に行うために、細胞数を出来る限り抑えて時間的、実験的な簡素化を図りながら計画を遂行する。
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Causes of Carryover |
昨年度は新型コロナウイルスにより非常事態宣言が発出され、在宅勤務が指示され、大学での長期にわたる実験の遂行が困難になった。細胞を扱う実験であるので、最低でも2ヵ月程度の持続的研究遂行が不可能となってしまった。新しい知見、TLR受容体の一部の発現について文献探索を行い、探索の結果を「生体防御機構におけるToll like receptor」として人間総合科学大学紀要に上梓した。TLRは炎症を伴う疾患を引き起こし、あるいは増悪することで知られており、最近TLRは免疫の仕組みにも深くかかわっていることが報告されている分子である。骨粗鬆症に発生には免疫機能の変調が関わっているとの説があり、実験的にさらに詳しく解明したい。
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Research Products
(2 results)