2021 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of mechanism of palmitic acid induced osteoporosis onset and development of prevention / defense method
Project/Area Number |
20K15484
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Research Institution | University of Human Arts and Sciences |
Principal Investigator |
岩崎 有希 人間総合科学大学, 人間科学部, 助教 (60762078)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | パルミチン酸 / LPS / RAW246.7細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨の強度が低下し、骨折などを引き起こし介護が必要となる高齢者の骨粗鬆症が増加している。しかしながら症状を亢進する破骨細胞分化ついては、その詳細は明らかとなっていない。破骨細胞は,骨髄造血幹細胞由来の単球/マクロファージ系前駆細胞から分化した生体内で骨組織を破壊・吸収することのできる唯一の細胞である。その分化は M-CSF(破骨細胞生存因子)/RANKL(破骨細胞分化誘導因子)シグナリングに依存していると考えられていた。本研究を進める過程で、申請者は破骨前駆細胞RAW246.7細胞がグラム陰性細菌の成分であるLPSとパルミチン酸によって炎症性サイトカインTNF-αの産生、細胞の巨大化などを起こすことを見出した。このことはWangら同様にLPSとパルミチン酸の添加によりRAW246.7細胞でMCP-1の発現を指標に両者が相乗的に破骨細胞分化を促進することが報告されている(2019 Lipids in Health and Disease)。申請者はLPS/パルミチン酸による、破骨細胞形成の詳細を解析し、他の脂肪酸、ホルモンなどによる拮抗作用を明らかにし、栄養学的な観点から骨粗鬆症の予防、防御法を検討することを目的として以下の実験を行い、LPSとパルミチン酸により誘導される破骨細胞分化をTNF-α、MPC-1、RANKL、RANKなどの発現をリアルタイムPCRで解析した。Preliminaryな結果であるが、MPC-1、TNF-αの産生は増加した。これらの結果は関節リウマチなど他の疾患が原因で発症する続発性骨粗鬆症において、申請者の見出したLPSやパルミチン酸などによる炎症性サイトカインの産生亢進が破骨細胞の増加の誘因となっている可能性を示すものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度は新型コロナウイルスにより非常事態宣言が発出され、長期にわたる様々な制約を受けて実験の遂行が非常に困難になった。本実験には細胞が良好な状態を保ちつつ実験に供することが求められるため、実験を遂行するのに困難が生じた。それに加えてコロナの蔓延のために、PCR関連製品、培養に関する外国製試薬の流通が滞りほとんどの実験が遂行不能の状態に陥った。現在では様々な制限も緩和される状況となっているが、こうした影響が実験遂行に大きな障害が生じたことも事実である。この様な状況を鑑み、実験結果の解析に多大な時間を余儀なくされる細胞形態の解析などの実験を縮小し、産生されるサイトカインの解析などを主とした研究を主に行うことにした。実験はLPS,パルミチン酸単独またはLPSとパルミチン酸処理によるMCP-1、TNF-α産生、またこのシステムにアディポネクチンを添加した場合のMCP-1、TNF-α産生の変化を作成したマウスのプライマーを用いて、リアルタイムPCRで解析した。アディポネクチンとその受容体の関連化合物がアディポネクチンと同様な挙動を示すことを確認した。このことは骨粗鬆症の予防・防御に道を開く可能性を示したものと考えられる。 現在LPSの細胞内情報伝達機構の中心と考えられているTLR4の阻害剤であるTAK242についても解析を進めている。残念ながら新型コロナ感染症の蔓延による実験の遅れが出ているが、現在できるだけ効率の良い方法を考慮しながら研究を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況の項でも記したが、本研究は細胞の正常な維持管理が非常に重要である。時間的余裕があればLPS、パルミチン酸による細胞形態の変化とマーカーたんぱく質の産生とをパラレルに解析すべきと考えられる。細胞の形態学的変化は顕微鏡下の形態の比較検討となり、膨大な時間を必要とする方法である。これまでは制限のある中、形態学的観察を行うことが難しかった。当該年度においても新型コロナウイルス感染が完全に収束したとは言い難い状況であるが、細胞の形態学的変化を含め、できる限り以下のように簡潔な実験を計画した。 ①RAW246.7細胞を培養し、LPS,パルミチン酸単独またはLPS+パルミチン酸処理を行い、mRNAを抽出、逆転写しリアルタイムPCRを用いて、MCP-1、TNF-α、RANKの産生を解析する。②同様の実験系にアディポネクチンあるいはその受容体の関連化合物を添加し、MCP-1、TNF-α、RANKの産生に対する影響を調べる。この時アゴニストの効果があれば、炎症により誘導される骨粗鬆症の治療法となる可能性が考えられる。③LPS、パルミチン酸などの細胞受容体と考えられている、TLR4の阻害剤であるTAK242の上記の系に対する影響を解析する。
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Causes of Carryover |
期間延長のために今年度の使用額となる。令和3年度は感染症の蔓延により実験計画の遂行が難しくなり、基金を延長年度に繰り越さざるを得なくなり、令和4年に購入する必要が生じたものである。新型コロナ感染症のために実験計画が大幅に遅れたことと、実験計画を変更したことにより購入試薬などの大幅な変更を余儀なくされた。
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