2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K15491
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
細谷 幸恵 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品研究部門, 研究員 (00613134)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 大腸菌 / サルモネラ / 損傷菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、発酵食品に混入した食中毒菌(大腸菌O157:H7、サルモネラ)について、発酵食品の微生物制御因子が食中毒菌の死滅、損傷、生残に及ぼす影響を明らかにすることを最終目的とする。R2年度は発酵食品の保存性に寄与する微生物制御因子(低pH、有機酸等)を含む環境(トリプチケースソイブロス(TSB)およびリン酸緩衝液(PBS))で暴露された2種の食中毒菌の損傷の進行を、トリプティケースソイ寒天培地とデソキシコレート寒天培地による2重平板法、およびThin agar layer(TAL)法の2方法を用いて検討した。 暴露に用いた試験培地はTSBおよびPBSに塩酸、乳酸、酢酸を加えることでpH3.0, 3.5, 4.0, 4.5, 5.0, 5.5, 6.0, 6.5に調製した(全48種)。これらの培地に食中毒菌を接種し、35℃で暴露しながら、暴露0時間、24時間、48時間において損傷菌率の算出を行った。TSBの試験系では、大腸菌O157:H7ではpH5.0以下の酢酸調製培地への暴露により損傷菌率が100%となり、乳酸調製培地ではpH4.0以下の試験区において損傷菌率100%となった(暴露48時間)。PBSの試験系では、48時間暴露により損傷菌率100%となったのはpH4.0以下の酢酸調製PBSおよびpH3.5以下の乳酸調製PBSであった。以上の結果から、菌体への損傷程度は同pHの暴露環境であっても、暴露環境中に含有する栄養成分が大きく影響する可能性が考えられた。サルモネラの試験でも同様に、同じpH条件であっても、TSB暴露環境でより高い損傷率となる傾向が見られた。この傾向は大腸菌O157:H7およびサルモネラの両試験共に、塩酸調製による低pH培地で暴露した場合には観察されなかった。また、試験全体を通して、TAL法よりも2重平板法で損傷菌率が高く算出される傾向が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
食中毒菌2種の低pH環境への暴露に関し、有機酸または無機酸による損傷進行の差異、および暴露環境における栄養源の有無による損傷進行の差異を明らかにすることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
R3年度はR2年度に検討を行ったストレス条件に類似する特性を有する試験食品の絞り込みを行うと共に、食中毒菌を混入させた食品検体からの核酸抽出法、PCR条件等の至適化の検討を行う。対象とする食品は、味噌、ヨーグルト、塩こうじ、糠床等を想定している。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染拡大予防を理由として、R2年度の所属学会の大会開催の中止、および研究業務を行えない期間が生じ、計上していた研究費が一部使用出来なかった。次年度に請求する研究費と合わせて研究計画遂行のために使用する。
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