2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K15491
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
細谷 幸恵 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品研究部門, 主任研究員 (00613134)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 損傷菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は病原微生物がダメージを受けうる食品条件の絞り込みと、食品混入下における病原微生物の特異的遺伝子を標的とした定量PCR条件について検討を行った。病原微生物を曝露するモデル食品として、塩こうじ、糠床、ヨーグルト、味噌を選定した。定量PCR法による標的微生物の定量の可否を検討するため、モデル食品における大腸菌O157:H7およびSalmonella Enteritidis (SE)の検量線作成を行い、R2値が0.94以上となるPCR条件を確認した。これらのモデル食品について食塩濃度、乳酸を既定濃度に調製し、それぞれの検体について微生物制御の重要な因子となる食塩濃度、pH、水分活性を計測した。具体的には、塩こうじ:食塩濃度5.0~13.0%(w/w)、水分活性0.89~0.97、pH 5.3~5.4、糠床:食塩濃度6.3~13.3%(w/w)、水分活性0.79~0.93、pH 6.4、ヨーグルト:乳酸濃度5.5~7.2 mg/ml、水分活性0.99、pH 3.9~4.2、味噌:食塩濃度5.6~13.0%(w/w)、水分活性0.83~0.94、pH 4.6~4.8とした。これらの試料内における大腸菌O157:H7およびSEの消長を寒天平板法またはMPN法にて観察した(初発菌濃度:6-7 log cfu/g、保存温度:5℃、25℃)。保存期間が長くなるにつれて寒天平板上で形成されるコロニー径のばらつきが生じるもの、あるいは選択寒天培地ではコロニー形成が見られないものの緩衝ペプトン水による回復培養ではその後も数日に渡って増殖可能なものなど、損傷菌に特徴的な現象が観察される食品種を確認した。これらの検討により、次年度計画している「発酵食品混入下で損傷を受けた病原微生物に対する定量PCR法による増殖遅延現象の捕捉」のための食品種、および微生物制御因子の絞り込みが完了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
発酵食品において重要となる複数の微生物制御因子が病原微生物2種(大腸菌O157:H7、サルモネラ)の生残性に及ぼす影響について検討を行った。試験においては、食品試料の調製に工夫の必要なものや、保存期間が想定よりも長期に渡り、反復試験に時間を要したものもあったが、おおむね当初の計画通りに進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度に絞り込みを行ったモデル食品について、これらの食品に直接的に食中毒菌を混入させる。経時的に食品環境へ曝露させた後、非選択培地で食品を乳剤化し回復培養しながら、食中毒菌の回復時増殖曲線を定量PCRにより取得する。これにより、発酵食品中で損傷を被った食中毒菌について、曝露時間と増殖遅延時間の関連を検討する。
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Causes of Carryover |
情報収集のため学会参加旅費を計上していたが、新型コロナ感染症拡大予防措置のためオンライン開催となったため、旅費の支出が叶わなかった。一方で、令和3年度の研究結果より、当初予定していたよりも長期に渡って保存試験を行う必要が生じていることから、これに必要な人件費・消耗品費の不足分に充てるよう使用計画を立てている。また、新型コロナの影響や、昨今の円安傾向から、PCRに用いる試薬、消耗品が当初計画より高額で入手せざるを得ない状況であることから、これらの消耗品購入の補填に使用する予定である。
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