2021 Fiscal Year Research-status Report
マトリクス効果と分配定数の類型化による農薬一斉分析でのサロゲート選択手法の構築
Project/Area Number |
20K15493
|
Research Institution | Research Institute of Environment, Agriculture and Fisheries, Osaka Prefecture |
Principal Investigator |
伴野 有彩 地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所(環境研究部、食と農の研究部及び水産研究部), その他部局等, 研究員 (60781135)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 多成分一斉分析 / マトリックス効果 / 残留農薬 / サロゲート / LC-MS/MS |
Outline of Annual Research Achievements |
残留農薬分析は食のリスク管理のため重要である。出荷前の作物の残留農薬モニタリング調査では、さまざまな種類の作物を対象にできるだけ多成分の農薬を一斉に精確かつ迅速に分析できる方法が望まれている。しかし、残留農薬分析では、作物から溶出される夾雑物により引き起こされるマトリックス効果が精確な分析の妨げとなり問題となっている。マトリックス効果への対応策として、農薬の安定同位体標識化合物(サロゲート)を用いた補正法があるが、多成分一斉分析では、どの農薬と作物の組み合わせでは補正が必要なのか、その場合にはどのようなサロゲートを用いて補正を行うことが出来るのかはほとんど明らかになっておらず、サロゲートによる補正法を多成分一斉分析に適用する課題となっている。本研究では、分析対象農薬に対する適切なサロゲート選定手法を構築することを目標に分析対象化合物の物理化学的特性からマトリクス効果の程度を予測可能かを調べるため、分析対象化合物の物理化学的特性及び作物におけるマトリックス効果の解明とこれらの類型化を検証している。 今年度は「マトリックス効果と分析対象化合物の物理化学的特性の関係性調査」を行った。50種類の分析対象化合物を対象に、厚生労働省の定める通知試験法(LC/MSによる農薬等の一斉試験法Ⅰ)を用いて葉菜類及び果菜類のそれぞれ3種類の作物を精製した際に生じた顕著なマトックス効果と保持時間や水/オクタノール分配定数、質量、水溶解度などの分析対象化合物の単一特性間の関係性を解析した。その結果、マトリックス効果と単一特性間でどの組み合わせにおいても相関は認められなかった。一般的に保持時間はサロゲートの選定の際に使用される特性であるが、本研究結果から、作物の多成分一斉分析において保持時間のみの情報からサロゲートを選定するとマトリックス効果が適切に補正されない可能性が高いことが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度に行ったマトリックス効果と分析対象化合物の物理化学的特性の関係性調査において、実験の遅れのため構造から分子記述子を抽出しマトリックス効果との関係性について調査する予定であったが記述子の計算手法の取得まで至らなかったため。
|
Strategy for Future Research Activity |
分析対象化合物の物理化学的特性について、文献から得られる既知の特性だけでなく、構造から分子記述子を抽出するなどして得られる特性とマトリックス効果との関係性について引き続き調査する。併せて、主成分分析などを行い、単一特性だけでなく分析対象化合物の物理化学的特性の複合的なマトリックス効果との関係について解析する。また、供試作物の変数を絞り、同一種類の作物におけるマトリックス効果と分析対象化合物の物理化学的特性の類型化を行い、分析対象農薬に対する適切なサロゲート選定手法を構築しその汎用性を検証する。
|
Causes of Carryover |
本年度の調査においてデータ解析が調査対象としたすべての項目では完了せず国際学会等での発表や論文投稿まで至らなかったため。次年度使用額については、試薬や固相カートリッジ等の物品類、学会参加費、英文校閲費等に充てる。
|
Research Products
(2 results)