2020 Fiscal Year Research-status Report
伝承薬セージ中の新規AhRリガンドを用いたT細胞サブセットへの分化誘導機構の解明
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20K15497
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西野 勝俊 京都大学, 生命科学研究科, 助教 (60803492)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 芳香族炭化水素受容体 / AhRリガンド / 免疫 / T細胞 / ジテルペン / セージ |
Outline of Annual Research Achievements |
ダイオキシン受容体として知られる芳香族炭化水素受容体 (AhR: Aryl Hydrocarbon Receptor) は、その活性化が、免疫細胞であるヘルパーT細胞のサブセットである、免疫促進のTh17細胞 (Th17) とTh22 細胞 (Th22)、および制御性T細胞 (Treg) の3つの細胞への分化促進に関わっていることが明らかとなっている。このAhRのリガンドとして、ダイオキシン類、トリプトファン代謝物とともにフラボノイドが知られている。そこで、申請者は、フラボノイドを含む食用植物摂取による、AhRを介した免疫制御を目指して、フラボノイドが豊富で、かつ欧州では薬用植物として知られる、ハーブの1種であるセージから、AhRリガンドの単離、同定を行い、それらがT細胞の分化誘導効果を有するか調べることにした。まず、セージ葉メタノール抽出物のAhRリガンド活性を調べたところ、活性が認められた。しかし、ケルセチンなどのセージ中の複数のフラボノイドは、AhRリガンド活性を示さなかった。そこで、セージ葉メタノール抽出物のAhRリガンドを単離、同定したところ、これまでAhRリガンドとしての報告がない、構造が類似したジテルペンを7種同定した。 AhRは、3つのT細胞サブセットへの分化促進に関わるが、分化促進されるサブセットは、AhRリガンド種によって異なることも明らかになっている。例えば、ダイオキシン類であるTCDDや内因性のトリプトファン代謝物であるキヌレニン (Kyn)、フラボノイドであるナリンゲニンは、免疫寛容に関わるTregへの分化を促進する。このことから、一部の単離したリガンドによるT細胞サブセットへの分化誘導方向を調べたところ、化合物ごとに、分化誘導方向パターンが異なっていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
セージからAhRリガンドとして、これまでに報告がないジテルペンを7種同定した。同定したジテルペンは、全てアビエタン骨格を持ち、構造が類似していた。これまでにAhRリガンドは、その種類により、T細胞サブセットへの分化誘導方向が異なることが知られている。そこで、一部のジテルペンのT細胞分化誘導方向を調べたところ、これらジテルペンも、これまでの報告と同様、化合物によって、T細胞サブセットへの分化誘導方向が異なるといる結果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
単離したジテルペンのうち、まだその分化誘導方向パターンを調べていないジテルペンについて、それらのT細胞分化制御パターンを明らかにする。 その結果をもとに、これまでに不明である、AhRリガンドによって、T細胞サブセットへの分化誘導方向が異なるメカニズムの解明を行う。AhRは転写調節因子であり、核内に移行後は、共役因子であるコアクチベーターをリクルートして、RNAポリメラーゼやTAFsなどの基本転写因子による標的遺伝子の転写を制御している。そこで申請者は、このAhRの転写活性化機構から、AhRリガンドは、その化学構造によってAhRとの結合様式が異なるために、リクルートするコアクチベーターに違いが生まれ、その結果、リガンドごとに制御される標的遺伝子の種類や転写量が変わることで、分化制御パターンが異なると考えている。これを証明するために、分化誘導に関わるコアクチベーターを選定し、それらのAhRとの相互作用を明らかにすることを予定である。
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Causes of Carryover |
研究が問題なく遂行できるよう、必要な物品を購入したが、キャンペーンなどを利用して、物品費を抑えるよう調整した一方で、想定外の機器の修理代が発生した。その結果、次年度使用額が生じた。生じた次年度使用額は、試薬などの物品費として、使用する予定である。
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