2021 Fiscal Year Research-status Report
低分子RNA制御を介した植物免疫プライミング機構の解析
Project/Area Number |
20K15498
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
田島 由理 筑波大学, 生命環境系, 研究員 (80771154)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 全身獲得抵抗性 / プライミング / 防御応答 / 植物免疫 / シロイヌナズナ |
Outline of Annual Research Achievements |
病原体の認識に伴い、植物は局所的な防御応答のみならず、長距離シグナルを通じて全身で二次感染に備える全身獲得抵抗性を発揮する。このとき、防御応答遺伝子の発現は二次感染に対して鋭敏に発現可能なプライミング状態となる。本研究では、植物における防御応答遺伝子のプライミングを制御するメカニズムの一端を明らかにすることを目的とした。シロイヌナズナの種々の変異体植物とトマト斑葉細菌病菌Pseudomonas syringae pv. tomato AvrRpm1 (Pst AvrRpm1)を用い、プライミングマーカー遺伝子の発言を指標として逆遺伝学的解析を行った。その結果、低分子RNAの生成を通じてRNAサイレンシングに寄与するDCL変異体植物(dcl)において、防御応答マーカー遺伝子のプライミングが低下していることを見出した。また、防御応答遺伝子のプライミングの低下と相関し、dcl変異体植物ではPst AvrRpm1接種後に誘導される全身獲得抵抗性が低下していることを明らかにした。このことから、DCLあるいはRNAサイレンシング経路によって防御応答遺伝子のプライミングならびに全身獲得抵抗性が制御されていることが示唆された。一方で、dcl変異体植物におけるPst AvrRpm1の接種葉での増殖量は野生型植物と同程度であった。このことから、DCLは病原体の認識によって引き起こされる局所的な防御応答ではなく、その後の長距離シグナルの生成からプライミング成立に到るまでのいずれかのステップで機能することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2021年4月に研究機関を異動したことに伴って、実験系の再セットアップが必要となった。また、2021年度の雇用形態がプロジェクト雇用の研究員ということもあり、研究計画を立案していた当初の想定よりもエフォートを割くことができなかった。特に実験系の再セットアップもままならなかったことから、研究進捗が遅れていると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年4月より再び研究機関を異動したため、喫緊で実験系の再セットアップを行なっている。1年遅れにはなるが、当初の研究計画通りDCL依存的なプライミング標的遺伝子の同定を目指し、トランスクリプトーム解析を行う。また、プライミングが低下していることをすでに見出しているヒストン修飾因子(ポリコーム複合体)の変異体植物でのプライミング誘導時のトランスクリプトーム解析の結果と照らし合わせ、RNAサイレンシング経路とヒストン修飾を介した遺伝子発現制御経路が重複するのかについても情報を得たい。また、それぞれの経路特異的な標的遺伝子や、両者の制御を受ける標的遺伝子について共通するDNAシス配列の探索などを通じ、それぞれの経路の制御に関わる新規因子の同定につなげたいと考えている。
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Causes of Carryover |
2021年4月に研究機関を異動し、プロジェクト雇用の研究員となった。研究計画を立案していた当初の想定とは異なり、エフォートを割くことがほとんど不可能であった。そのため、本研究を進めることができず次年度使用額が生じた。 2022年4月から再び研究機関を異動し、本研究を進めることとなった。1年遅れにはなるが、本年度は当初の研究計画通りDCL依存的なプライミング標的遺伝子の同定を目指し、種々の次世代シーケンス解析を行う。実験系の再セットアップや、次世代シーケンス解析の外注費用に次年度使用額を充てていきたいと考えている。
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