2022 Fiscal Year Research-status Report
低分子RNA制御を介した植物免疫プライミング機構の解析
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20K15498
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Research Institution | Rhelixa, Inc. |
Principal Investigator |
田島 由理 株式会社Rhelixa(研究開発部), 研究開発部, シニアサイエンティスト (80771154)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 全身獲得抵抗性 / プライミング / 防御応答 / 植物免疫 / シロイヌナズナ |
Outline of Annual Research Achievements |
植物は病原体の認識に伴って、病原体の認識部位での局所的な防御応答に加え、長距離シグナルを介した全身での防御応答を発揮する(全身獲得抵抗性)。全身獲得抵抗性発揮時には、防御応答遺伝子が二次感染に対して鋭敏に発現可能なプライミング状態となる。 本研究では、植物における防御応答遺伝子のプライミングの制御基盤の一端を明らかにすることを目的とした。シロイヌナズナの種々の変異体植物とトマト斑葉細菌病菌Pseudomonas syringae pv. tomato AvrRpm1 (Pst AvrRpm1)を用い、プライミングマーカー遺伝子の発現を指標として逆遺伝学的解析を行った。その結果、低分子RNAの生成を通じてRNAサイレンシングに寄与するDCL変異体植物(dcl)において、防御応答マーカー遺伝子のプライミングが低下していることを見出した。また、防御応答遺伝子のプライミングの低下と相関し、dcl変異体植物ではPst AvrRpm1接種後に誘導される全身獲得抵抗性が低下していることを明らかにした。このことから、DCLあるいはRNAサイレンシング経路によって防御応答遺伝子のプライミングならびに全身獲得抵抗性が制御されていることが示唆された。一方で、dcl変異体植物におけるPst AvrRpm1の接種葉での増殖量は野生型植物と同程度であった。このことから、DCLは病原体の認識部位における局所的な防御応答ではなく、その後の長距離シグナルの生成から非感染葉での防御応答遺伝子のプライミング成立に到るまでのいずれかのステップで機能することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2021年度および2022年度に研究機関を異動したことに伴って、実験系の再セットアップが二度必要となった。研究計画立案当初は研究機関の再三の異動を考慮していなかったことに加え、異動後に割くことができたエフォートが異動前よりも少なかったことから、計画より進捗が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年4月に再び研究機関を異動した。その後、実験系の再セットアップを行い、同様の現象が見られることが確認できた。また、延長申請を承認いただいたため、計画よりも遅れてはいるが、当初の研究計画通りプライミング誘導時のトランスクリプトーム解析を行い、DCL依存的なプライミング標的遺伝子の同定を目指したい。加えて、プライミングが低下していることをすでに見出しているヒストン修飾因子(ポリコーム複合体)の変異体植物でのトランスクリプトーム解析の結果と照らし合わせ、RNAサイレンシング経路とヒストン修飾を介した遺伝子発現制御経路の関係性や共通性についても情報を得たいと考えている。
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Causes of Carryover |
研究計画の立案時や異動時の想定とは異なり、2021年4月に異動した研究機関ではエフォートを割くことがほぼ不可能であったため、大幅に次年度使用額が生じた。2022年4月から再び研究機関を異動し本研究を再開したものの、他の業務の多忙から当初の想定よりもエフォートを割くことが難しかった。ただし、実験系の再セットアップについては進めており、ほぼ完了することができた。また、延長申請が認められたため研究計画を1年延長し、本年度はDCL依存的なプライミング標的遺伝子の同定を目指し、種々の次世代シーケンス解析を行う予定である。
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Research Products
(1 results)