2020 Fiscal Year Research-status Report
植物の光障害耐性を支える新奇オルガネラ・オートファジー経路の同定
Project/Area Number |
20K15501
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
中村 咲耶 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 訪問研究員 (20845151)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | オートファジー / オルガネラ / シロイヌナズナ / 光障害 / 細胞内品質管理 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物は光合成により成長する一方で、強烈な太陽光による障害に常に晒されている。申請者らは、太陽光の主な障害要因である紫外線 (UVB) や強光に対する植物の耐性機構に着目し、光障害により損傷した葉緑体が、細胞内分解系であるオートファジーによって除去されることを明らかにした。本研究では、光障害時に、植物成長を支える他のオルガネラの品質管理にもオートファジーが寄与する可能性に着目し、植物の新奇オルガネラ・オートファジー経路を同定し、ストレス応答としての重要性を検証する。これにより、光障害耐性機構として植物オートファジーが担う役割の全容解明を目指す。令和2年度は、以下のような具体的な成果が得られた。 項目1として、光障害 (UVB・強光) 時における各種オルガネラの数・サイズを定量評価した。特に、UVB障害付与後にミトコンドリアの数が減っている一方で、オートファジー欠損株ではその数が増え、野生株と比較すると、個々のサイズが小さいものが増加していた。項目2でオートファゴソームマーカーATG8との共局在を解析し、緑色蛍光タンパク質あるいは赤色蛍光タンパク質で可視化したATG8とミトコンドリアが隣接あるいは共局在している様子が観察された。これらの結果から、UVB障害を受けたミトコンドリアの除去にオートファジーが機能していることが示された。 また、項目1の解析において、ペルオキシソームについては、野生株に比較し、UVB障害前からオートファジー欠損株で数が多く、UVB障害後にはさらに増加することを見出した。よってオートファジーは紫外線障害時にペルオキシソームについても積極的に分解している可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、オートファジーが紫外線障害を受けたミトコンドリアの除去を担っていることを明らかにすることができた。他のオルガネラについても解析を行っており、本研究計画はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究はおおむね順調に進展しているため、引き続き当初の計画に沿って計画を進めていく。特に、ミトコンドリア・オートファジー(マイトファジー)が植物の紫外線応答として働いている可能性が示されたため、その際に機能するマイトファジー・レセプターなど新規の関連因子の探索にも焦点をあてる。
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Causes of Carryover |
本年度は学会や出張が中止、あるいはオンラインでの開催となり、予定していた請求額よりも旅費の使用が少なかったため。残高については、翌年度の消耗品費に加算して、顕微鏡観察用の備品などの購入に充てる。
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