2021 Fiscal Year Research-status Report
異質倍数性を逆手に取る:コムギNAM集団の効率的作出による有用遺伝子の網羅的探索
Project/Area Number |
20K15502
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西村 和紗 京都大学, 農学研究科, 助教 (60835453)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 育種学 / コムギ / 次世代シーケンス / NAM / 倍数性 / MIG-seq / 合成六倍体コムギ |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度の春に19系統の四倍体コムギとLangdonとのF1個体を種子親、タルホコムギ系統KU-2098を花粉親として交配を行った。8328小花を交配した結果、1594粒の三倍体種子を得ることができた。四倍体コムギの系統間にはタルホコムギとの交配の成功率に差が認められることが知られているが、本研究では、どの組み合わせにおいても三倍体種子を得ることができた。一方で、これらの種子を発芽させた結果、1594粒中、503粒しか発芽しなかった。そのため、当初はファイトトロン内で三倍体を育てて合成六倍体を得ることを計画していたが、できる限り分げつ数を増やして、各三倍体個体から確実に合成六倍体を得るために、ハウス内に三倍体を移植した。三倍体個体は健全に生育しているが、一部の個体に異常分げつ矮性と見られる雑種生育不全が認められた。今後は、これらの雑種生育不全に関わる遺伝子座およびその原因遺伝子の同定も、NAM集団の作出と並行して試みる予定である。 また、ゲノム中の限られた領域を効率良く次世代シーケンサーでシーケンスする手法の一つである、MIG-seq(Suyama and Matsuki 2015)はddRAD-seqなどの手法と比較して得られる多型数が少ないと報告されているが、コムギにおいては比較的低コストで、QTL解析やアソシーエーション解析に十分な多型が得られることを令和2年度に明らかにした。令和3年度には、この成果に加えて、MIG-seqでは1stPCRに用いるDNAの濃度を揃えずとも欠損データの少ないジェノタイピングができることを明らかにした。これらの成果について論文に取りまとめ、DNA research誌に投稿し、審査中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度、四倍体コムギのF1と交雑するタルホコムギ系統の変更を行ったため、当初の計画より1年の遅れが生じている。また、三倍体種子の発芽率が悪かったため、令和4年度の春も四倍体コムギとタルホコムギとの属間交雑を行う予定である。これらの状況を考慮し、「やや遅れている」と評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初計画していた合成六倍体コムギNAM集団2000個体を確保するために、令和4年の春にも三倍体種子の交配を行う予定である。また、令和3年度に、三倍体種子の発芽率が悪いことが明らかとなったので、交配効率の悪い系統を中心に胚救済を試みて確実に三倍体個体を確保する。これらの系統は令和4年の夏の間にファイトトロンにおいて栽培し、秋までに合成六倍体種子を得る。得られた合成六倍体は令和4年の秋から圃場条件で栽培を行う。
|
Causes of Carryover |
本研究において作出する予定の合成六倍体コムギNAM集団の構築が、花粉親のタルホコムギ系統の変更により1年遅延している。そのため、このNAM集団のジェノタイピング費用を繰り越す必要があり、令和4年度にNAM集団の遺伝子型決定を行うことを計画する。
|