2020 Fiscal Year Research-status Report
抗菌活性に着目した発芽時耐湿性の遺伝的制御機構の解明
Project/Area Number |
20K15507
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
原 尚資 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 北海道農業研究センター, 主任研究員 (20721426)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 発芽時耐湿性 / 抗菌活性 / 遺伝解析 / ソバ |
Outline of Annual Research Achievements |
作物栽培において発芽時の湿害は、安定生産に深刻な問題を引き起こすことから、発芽時耐湿性育種は様々な作物において求められており、その遺伝的制御機構の解明は緊急の課題である。発芽時耐湿性に関連する性質のひとつとして不定根形成が挙げられているが、その表現型解析の再現性が低いことから詳細な遺伝解析が困難であった。一方で、殺菌水の使用や土壌・種子殺菌処理により発芽時耐湿性が向上することが示されていることから、表現型解析時の再現性の低さの理由として不定根形成能だけに注目してきたことにあると考え、新たに幼根の抗菌活性能に着目した。本研究は、播種時の冠水処理において畑作物種の中でも湿害に極めて弱いソバを用いて、抗菌活性能の差異が湿害発生時の不定根形成に与える影響を調査し、不定根形成における不定根形成能と抗菌活性能の作用を明確にした発芽時耐湿性評価、分離集団の作製とその表現型解析、および遺伝解析を実施することで、作物が有する発芽時耐湿性における遺伝的制御機構の詳細に迫るものである。 令和2年度においては、不定根形成における不定根形成能および抗菌活性能の関連性解析として、既存の水耕評価による発芽時耐湿性の評価を実施した。現時点では小規模の品種の供試に限られているものの、得られた研究成果については以下となる。 ・不定根形成率における殺菌水処理効果が認められ、処理により2倍以上の差が生じる品種が存在するとともに、品種間差も確認された。 ・冠水処理後10日目までの生存率においても殺菌水処理効果が認められ、処理により3倍以上の差が生じる品種が存在するとともに、品種間差も確認された。 ・不定根形成されるものの、その後の幼茎腐敗による枯死が生じる個体が確認されたことから、幼茎腐敗と発芽時耐湿性との関連性についても留意すべき点となる可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初研究実施計画通りの進捗であり、当初仮説に準ずる結果も得られ始めている。令和3年度での引き続きの大規模水耕および土耕試験による、不定根形成における不定根形成能および抗菌活性能の関連性解析実施することで、発芽時耐湿性における不定根形成能および抗菌活性能との関連性の詳細が明らかになる。また、各品種、系統間での発芽時耐湿性が明らかになることで、令和4年度での発芽時耐湿性の遺伝的制御機構の解明に向けた遺伝解析用分離集団の作製も可能になると考えられる
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度での水耕評価により、不定根形成および発芽時耐湿性における抗菌活性能の影響が強く示唆されたことから、令和3年度は多数の品種や系統を供試した網羅的評価を実施するとともに、通常栽培条件に即した土耕による評価を実施することで、水耕による簡易評価法との関連性を調査する。さらには、ソバにおける発芽時の腐敗菌を塗布した培地上での腐敗程度、および腐敗菌の増殖程度の調査を行うことで、抗菌活性能の詳細な評価を目指す。 これらの調査結果に基づき、不定根形成能や抗菌活性能に差異のある両親個体を選抜することで遺伝解析用分離集団の作製を実施し、令和4年度での遺伝解析に向けた準備を進める計画である。
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Causes of Carryover |
当初購入計画にある高圧蒸気滅菌器が新たに共通備品として導入され、本研究に使用可能となったことから本事業での購入の必要が無くなった。これにより生じた差額は次年度以降での物品費に充てる計画である。
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