2022 Fiscal Year Annual Research Report
新たに見出した温度応答性葉緑体運動の実態と誘導機構の解明
Project/Area Number |
20K15509
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
間合 絵里 東京農業大学, 国際食料情報学部, 助教 (90804328)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 葉緑体運動 / シコクビエ / 温度 / 光 / 環境ストレス / アクチン |
Outline of Annual Research Achievements |
シコクビエ(Eleusine coracana (L.) Gaertn.)は、乾燥や強光などのストレス環境で生育できる有用な雑穀であり、その環境耐性機構を解明することはストレス研究や環境変化に強い作物育種に重要である。シコクビエはアフリカの乾燥地帯で栽培される一方で、インドやネパールにおいても食糧資源として古くから利用され、ヒマラヤの丘陵地での栽培も盛んである。こうした高標高地では、日中は強い日射によって気温が上がるものの、夜間は一転して低温となる。このため、シコクビエは乾燥や強光だけでなく低温に対する耐性も備えていると考えられる。 これまでに、シコクビエでは乾燥や強光に応答した独特の葉緑体運動が見出されているが、温度ストレスに対する葉緑体の応答は未知である。そこで本研究では、温度ストレス応答性葉緑体運動の実態と誘導機構の解明を目指し、種々の温度条件下でのシコクビエ葉緑体の細胞内配置を調査した。さらに、温度応答性葉緑体運動の誘導に関わる光波長および物質を探索した。その結果、シコクビエの葉緑体は低温・明条件下で維管束鞘細胞側に凝集し、葉緑体凝集時に葉の光透過率が上昇することがわかった。また、低温下の葉緑体凝集運動の誘導に青色光、アブシジン酸、アクチンが関与することを見出した。低温・明条件下では量子収率が低下したことから、低温下の葉緑体凝集運動の発生は葉が光ストレスを受けていることと関連があると考えられた。 一方、低温・暗条件では維管束鞘細胞に近い位置にいる葉緑体数が減少し、葉緑体は独特の遠心配置をとることがわかった。阻害剤を用いた実験から、葉緑体の遠心配置はアクチンが機能しないことと関連があると考えられた。 以上より、シコクビエの葉緑体は、低温下で光の有無により異なる配置をとることが明らかになり、青色光とアクチンを介した運動機構があることが示された。
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