2020 Fiscal Year Research-status Report
キャベツの強力な花成抑制機構を突破するダイコンの花成誘導因子の特定と採種への応用
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20K15518
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
元木 航 京都大学, 農学研究科, 助教 (00867814)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 早期開花技術 / 晩抽性育種 / 接ぎ木 / フロリゲン / ダイコン / キャベツ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、難開花性形質と接ぎ木による花成誘導法とを利用した“花の咲かない野菜種子”生産体系の開発に向けて、ダイコンが示す強力な接ぎ木花成誘導能力に関わる因子の特定と、接ぎ木による採種法と通常の採種法とで得た種子の農業形質の比較を行う。まずダイコンの接ぎ木花成誘導能力の評価法として、従来の老化苗を穂木に用いる方法では、生育の揃った穂木を十分量確保することが困難であったため、実生の幼苗を穂木に用いる接ぎ木法の開発に取り組んだ。幼苗を用いる場合、胚軸部で接ぎ木すると発根しやすく、活着不良になりやすいことが分かった。そこで播種後3-4週間後の実生苗を用い、茎部で切断して接ぎ木したところ、高確率で活着させられるようになり、接ぎ木花成誘導能力を安定して評価出来るようになった。花成誘導因子の有力な候補であるFTタンパクの接ぎ木花成誘導への関与の検証については、当初計画ではタグ付きのFTタンパクを発現したキャベツ形質転換体を用いた接ぎ木実験により、間接的に検証する予定であった。しかし、並行してダイコンのFTタンパクを直接検出する抗ペプチド抗体の開発を試みたところ、作成した3種の抗体の内の一つでダイコンのFTタンパクを検出できることが明らかになった。これにより、ダイコン台木から穂木へと供給されるFTタンパク量と接ぎ木花成誘導の成否との関係を直接調べられるようになった。また、採種法の異なるキャベツの種子を圃場で栽培し、植物体の大きさ、結球重および開花日を調査したところ、これらの農業形質に採種法による違いは認められなかった。次年度も同じ条件で圃場試験を行い、この結果の再現性を確認する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施の要となる接ぎ木花成誘導能力の評価法を確立し、花成誘導因子の有力候補であるFTタンパクを検出できる抗体も得ることができた。また1年目の圃場試験を実施し、形質評価を行うことができた。当初の予定通り、ダイコンの接ぎ木花成誘導能力に関わる因子の特定と、採種法がキャベツ種子の形質に与える影響を評価するための準備が整ったことから、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度開発した抗体を用いて、台木から穂木へと供給されたFTタンパクの量を定量的に評価する方法を確立し、ダイコンの種内でみられる接ぎ木花成誘導能力の違いが、穂木へのFTタンパクの供給能力により説明できるのかを検証する。圃場試験も予定通り実施し、本年度の結果の再現性を確認する。
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Causes of Carryover |
COVID-19のパンデミックによって、参加予定だった国際学会が延期となり、その分の旅費によって次年度使用額が生じた。この学会は次年度以降に開催される予定であり、繰越金はその費用として使用する。
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Research Products
(1 results)