2021 Fiscal Year Research-status Report
硫化水素施与による暖温帯域における亜熱帯果樹の低温ストレス軽減技術の確立
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20K15521
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
近藤 友大 京都大学, 農学研究科, 准教授 (50758422)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 亜熱帯果樹 / 熱帯果樹 / 低温耐性 / 硫化水素 / 光合成速度 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年11月-2022年1月にパッションフルーツに硫化水素を施与し,光合成速度,PSIIの最大量子収量(Fv/Fm),SPAD値を測定した.最低気温5-10℃程度であった11月には,硫化水素施与によって光合成速度は15%程度増加した.最低気温が5℃を下回るようになった12月以降も硫化水素によって光合成が促進される傾向はあったが,有意差はなかった.Fv/Fm,SPAD値は測定時期によらず影響はなかった.1月に収穫した果実品質の調査もおこなったが,光合成促進による果実品質の向上はみられなかった. 同様にして2021年11月-12月に熱帯果樹のカカオに硫化水素を施与し,光合成速度,Fv/Fm,SPAD値を測定した.カカオでは光合成速度,Fv/Fm,SPAD値ともに硫化水素による効果はなかった.また硫化水素の施与の有無にかかわらず,11月-12月の5℃を下回る低温によってFv/Fmが低下し,すべての植物が枯死した.
亜熱帯果樹のパッションフルーツは最低気温5℃程度では硫化水素による光合成促進効果があったが,最低気温が5℃を下回ると効果は有意ではなくなった.より低温に弱い熱帯果樹のカカオでは,最低気温5℃程度でも硫化水素による効果はなかった.したがって,硫化水素によって低温耐性が高まる温度域は,それぞれの植物元来の低温耐性の違いによる可能性がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初4年間で4本の試験を予定していたが,開始から2年間で2本の試験を実施し,アボカドとパッションフルーツが硫化水素施与によって光合成速度が向上すること,およびその程度を示すことが出来た.また当初の予定にはなかったが,熱帯果樹カカオに関しても同様の試験を追加しておこなった. 当初の予定とは順番は異なるが,試験計画はおおむね順調に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定とは順番は異なるが,残りの2年でアボカドとパッションフルーツが硫化水素施与によって生存可能最低気温を何℃低下させられるかを検証する.
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響により,学会参加のための旅費はかからなかった.また試験を実施する順番を変えたことで,現有の消耗品で試験の実施が可能になったので消耗品費もかかっていない. 差額に関しては次年度以降の試験の消耗品に充てる予定である.
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