2023 Fiscal Year Annual Research Report
硫化水素施与による暖温帯域における亜熱帯果樹の低温ストレス軽減技術の確立
Project/Area Number |
20K15521
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
近藤 友大 京都大学, 農学研究科, 准教授 (50758422)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 亜熱帯果樹 / 熱帯果樹 / 低温耐性 / 硫化水素 / 光合成速度 / 葉の損傷 / パッションフルーツ / アボカド |
Outline of Annual Research Achievements |
100L鉢で栽培されている亜熱帯果樹アボカドの5年生接木苗に,0.5mMのNaHS(水に溶解しH2Sを発生させる試薬)を週に1回1L施与した.最低気温8℃程度の軽微な低温ストレス環境下において光合成は30%ほど促進された.一方で,葉の損傷の指標であるFv/Fmへの影響はみられず,H2Sによる葉の損傷抑制効果は認められなかった. 同様にして亜熱帯果樹のパッションフルーツにNaHSを施与した.試験は2年に渡っておこなったが,両年とも最低気温5℃以上の条件では光合成速度が15-30%程度促進した.またアボカド同様に,葉の損傷の指標であるFv/Fmへの影響はみられず,H2Sによる葉の損傷抑制効果は認められなかった.また最低気温が5℃以下のパッションフルーツにとっては強い低温ストレス下ではH2Sによる光合成促進効果もみられなかった.さらに,光合成速度の促進は果実品質の向上にはつながらなかった. 熱帯果樹カカオでも同様の試験を2年に渡りおこなったが,両年とも最低気温10℃程度の低温条件下で光合成速度は促進されなかった.また,葉の損傷の指標であるFv/Fmの低下を抑制しなかった. また,パッションフルーツに関してはH2Sが高温ストレスにおよぼす影響についても評価した.高温ストレスは低温ストレスとは逆のストレスではあるが,その耐性メカニズムには共通点が多い.その結果,最高気温が40℃をこえる強い高温ストレス下においてのみ,H2Sによって光合成速度が促進された.一方で,葉の損傷の指標となるFv/Fmなどに関しては影響を与えなかった.
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