2020 Fiscal Year Research-status Report
Genetic relationship between wild and cultivated chestnut population and identification of the genes related to chestnut domestication
Project/Area Number |
20K15524
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
西尾 聡悟 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 果樹茶業研究部門, 主任研究員 (30507596)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 遺伝的構造解析 / DNA |
Outline of Annual Research Achievements |
北海道および四国に自生する野生グリを約120個体をサンプリングしDNAを抽出した。これまでも500個体以上の野生グリをDNA採取しており、九州北部を除くと日本国内のほぼすべての地域の野生グリのDNAを収集することができた。一部の野生グリについては、形質調査を行うために接ぎ木で繁殖した。 これまで収集した野生グリ集団と栽培グリ集団について、SSRマーカーでジェノタイピングして遺伝的構造解析をしたところ、九州の野生グリは他の地域のクリと遺伝的に大きく異なることが明らかとなった。葉緑体のSSRマーカーのハプロタイプ解析では、ニホングリは大きく2つのタイプにわかれており、九州の野生グリとそれ以外の野生グリと栽培グリに分かれたことから、この2つのタイプは最終氷期以前に分化したと推定された。また、全国から採取した野生グリの一部は栽培グリと同様の遺伝的構造をもっていたことから、栽培グリから野生グリへの遺伝子流入が推定された。特に関東のクリは栽培グリからの遺伝子流入の程度が大きく、戦後の栽培グリの植栽や開発によるクリの自生地の減少が影響していると推定された。栽培グリの由来については、従来は江戸時代の丹波地域(京都府、大阪府、兵庫県)が由来とされていたが、今回の遺伝的な解析では由来を推定することはできなかった。今後栽培グリの遺伝子流入の影響を受けていない純粋な野生グリ集団と栽培グリ集団を用いてさらなる解析を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初日本全国の野生グリを収集する予定であったが、出張しにくい環境が続いたため、九州北部の野生グリについては令和3年度にサンプリングすることとした。その他の解析は順調に進んでおり、SSRのマーカーによる遺伝的解析で遺伝的構造のアウトラインが得られているため、今後ddRAD等でさらなる詳細な解析を効率良く行うことができる。野生グリと栽培グリのSSRマーカーの解析については論文として公表した。
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Strategy for Future Research Activity |
野生グリの収集と遺伝的解析については、これまでと同様に進めていく予定である。解析手法については、野生グリ由来のDNAの質と量がやや不足しているため、ddRADによる解析が困難な可能性もあるので、Mig-seqやSSR-GBS等他のNGSを使った解析を検討している。これまでクリのリファレンスゲノムはチュウゴクグリのみが公開されていたため、解析に最適なニホングリ「銀寄」の全ゲノム解析にも着手した。ニホングリのゲノムをリファレンスとすることで、さらに高精度な遺伝的構造解析ができることが期待される。
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Causes of Carryover |
少額残金が発生したが、残金で購入できる試薬がなかったため、次年度に繰り越すこととした。解析に必要なDNAプラスチック製品を次年度の予算とあわせて購入することとする。
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