加温ブドウの日没前昇温（BEOD加温）による成熟促進メカニズムの解明

2020 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 20K15526
• Research Institution: Shimane Agricultural Technology Center
• Principal Investigator: 栂野 康行 島根県農業技術センター, 栽培研究部, 専門研究員 (10512949)
• Project Period (FY): 2020-04-01 – 2023-03-31
• Keywords: 日没前昇温 / 果実分配率 / 光合成速度 / 純同化率

Outline of Annual Research Achievements

ブドウ‘デラウェア’加温栽培の燃油消費量の削減を目的に、日没後から2時間ハウス内温度を25℃まで高め、その後日の出まで13℃の低温管理を行うEOD加温に対して、日没の2時間前からハウス内温度を高め、日没時から13℃で管理するBEOD加温について、果実品質を比較した。その結果、BEOD加温は成熟の早晩に寄与する積算温度が従来のEOD加温より少なくなるにも関わらず、果実の糖集積が促進され、成熟期が前進化した。本研究では、このBEOD加温の糖集積促進効果のメカニズムを明らかにすることを目的にしている。
BEOD加温ではまだ比較的日射のある日没前の時間帯からハウス内温度を高めるため、光合成速度が上昇する可能性がある。そのため、最初に光合成速度を比較調査（対照：EOD加温）したところ、BEOD加温では、光合成速度が再び高まることが明らかになった。このことにより、光合成同化産物の量が増加し、BEOD加温の糖集積促進効果に繋がると推察された。次に、光合成同化産物の量が増えていることを明らかにするため、BEOD加温開始直前に新梢基部を環状はく皮して、同化産物の移動を防止し、EOD加温との純同化率（単位葉面積、時間当たりの乾物増加量）を比較した。その結果、BEOD加温の純同化率は、EOD加温より多いことが示された。したがって、前述の光合成速度の上昇が、純同化率の増加に結び付くと考えられた。併せて、光合成同化産物の果実への分配率を調査したところ、両区とも24～28％で差はなかった。

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

研究成果は概ね予想どおりであり、当初の推測を裏付けるものとなった。
また、研究は計画書どおりに進んでおり、本研究課題はおおむね順調に進展していると思われる。

Strategy for Future Research Activity

本年度は当初の計画どおり13Ｃトレーサー法により、 BEOD加温による同化産物の転流と分配を明らかにする。
また、降温処理に伴う葉の蒸散量変化を明らかにするため、樹体内水分含量と相関の高い静電容量値を測定する。
さらに、新しいチャレンジとして反射式光度計を用いて同化産物の転流量増加を明らかにできないか試験を追加する。具体には、ブドウの転流糖の一つであるグルコースに着目し、その変化を捉まえることで、葉から果実への同化産物の動態を把握する。

Causes of Carryover

初年度の使用額が減じた理由は、実験に利用する圃場の管理費（農薬、肥料、生育調節剤など）が他の圃場で利用した余剰分で補填できたため。