2020 Fiscal Year Research-status Report
カイコとエリサンの集中産卵性を制御する遺伝子基盤の解明
Project/Area Number |
20K15535
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
李 允求 学習院大学, 理学部, 助教 (50847168)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 順遺伝学的解析 / 家畜化 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は, エリサンとシンジュサンのF1個体をエリサンに戻したBC1世代の雌個体を用いて, エリサンとシンジュサンの産卵様式を分かつ原因遺伝子の探索をおこなった. 先行研究より, 両種の産卵様式を支配している染色体は, 性染色体(Z染色体)であると明らかになっているため, エリサンのゲノム情報を元にZ染色体上に多数のゲノミックマーカーを作成した. 分散産卵性を示したBC1雌個体を用いてポジショナルクローニングをおこなったところ, 責任領域をZ染色体上の末端約700kbまで絞り込むことができた. 当研究室で飼育しているシンジュサンは, 飼育条件下における交尾活性が低く, ゲノム編集を目的とした, 初期胚へのマイクロインジェクションが困難であることが予想されていた. しかし, 2020年度に, 非常に容易に交尾し, 継代が容易なシンジュサン系統を新たに入手し, この系統のゲノム解読を実施した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
注目する形質(産卵様式)を支配する遺伝子の責任領域の絞り込みは順調に進んでいる. しかしながら, BC1世代において分散産卵性を示した個体の子孫(息子)をさらにエリサンに戻して次世代を得たところ, BC1世代にて確認された責任領域をシンジュサン型で有するにもかかわらず, エリサン型の集中産卵性を示す個体が多く出現した. このことから, この形質の発現は, 単一の遺伝子に支配されているのではなく, Z染色体上の主働遺伝子と, 複数の修飾遺伝子によって支配されているのではないかと予想している.
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Strategy for Future Research Activity |
1. 別系統のシンジュサン(札幌系統)を用いて, 前年度のポジショナルクローニングの結果のバリデーションを取る. 2. エリサンおよびシンジュサンの雌蛾の脳および第九神経節のRNA-seqをおこなう. 羽化後および産卵中の2点でサンプリングを行い, 発現変動が見られるZ染色体上の遺伝子を探索する. 3. 1および2の結果を元に候補遺伝子を吟味し, シンジュサンをレシピエントとしてCRISPR/Cas9システムを用いた遺伝子ノックアウトをおこなう. 4. 家畜化に伴う産卵様式の変化は, クワコとカイコの間でも確認できる. そのため, 2020年度にエリサンとシンジュサンを用いておこなった順遺伝学的解析を, クワコとカイコについてもおこなう. 幸いなことに, カイコとクワコは交配可能かつ妊性のあるF1個体を生じることができるため, 順遺伝学的解析にはなんら支障がない.
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