2020 Fiscal Year Research-status Report
鱗翅目昆虫に特異的な二型精子の運命決定メカニズムの解明
Project/Area Number |
20K15537
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
酒井 弘貴 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, 研究員 (30814660)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 無核精子 / 蚕 |
Outline of Annual Research Achievements |
生物は子孫を残すために洗練された受精戦略を有する。鱗翅目昆虫では、核を保持し卵との受精に用いられる「有核精子」に加えて、核を持たない「無核精子」を精原細胞から分化させて受精を補助する。無核精子を利用した受精システムは、鱗翅目昆虫の繁栄をもたらした重要な生殖戦略の一つであると考えられる。しかし、それを実現する遺伝的基盤は未解明のままであった。申請者らは、過去の報告で、カイコのRNA結合タンパク質遺伝子Sex-lethal (Sxl) の機能解析の過程で、偶然にもその変異体が無核精子の分化に異常を来すことを見出している。そこで、本研究では、このSxl遺伝子を切り口として無核精子の形成に関わる分子をとらえることで、無核精子の運命決定の分子メカニズムの解明を目指す。 有核精子に分化するか、無核精子に分化するのかの運命決定がなされる時期は、形態学的な観察から精母細胞だと考えられている。そこで、有核精子と無核精子の減数分裂が生じる発育ステージが異なることに着目し、有核精子に分化する精母細胞(有核型精母細胞)と無核精子に分化する精母細胞(無核型精母細胞)の遺伝子発現に対して、RNA-seqによる比較トランスクリプトーム解析を行った。本年度は、トランスクリプトームのデータ解析から得られた、無核精子形成に関与する可能性がある候補遺伝子に対して、CRISPR-Cas9システムを用いたゲノム編集や、RNAiによるノックダウン解析を行ないSxl遺伝子との関連について調査した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度の研究では、カイコを用いた機能解析を行なったが、新型コロナウイルス感染症対策のためカイコ飼育スケジュールが大幅に変更されたことが原因で、研究遂行に大幅な遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き遺伝子の機能解析を行う。さらに、本研究で得られる知見は、遺伝子組換えカイコの拡散防止技術にも繋がることから、今年度は、応用技術への可能性についても検証する。
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Causes of Carryover |
必要な試薬が予定よりも105円ほど安く購入できたため。この105円は、次年度の試薬購入費に使用する予定である。
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