2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20K15539
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Research Institution | National Institutes of Biomedical Innovation, Health and Nutrition |
Principal Investigator |
塚本 悠介 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 難治性疾患研究開発・支援センター, 特任研究員 (60838944)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | D-セリン / D-アミノ酸 / キイロショウジョウバエ |
Outline of Annual Research Achievements |
昆虫を含めた無脊椎動物の体内には、L-アミノ酸だけでなく、D-アミノ酸が豊富に存在している。例えば、甲殻類ではD-アラニンが細胞内等浸透圧調節に利用されている。また、特に昆虫では、D-アミノ酸が成長の制御に関与することが示唆されている。しかし、D-アミノ酸の測定が困難であったことから、D-アミノ酸による昆虫の成長制御機構についての解析はほとんど進んでいない。 本研究は、キイロショウジョウバエをモデルとして、昆虫の成長制御機構におけるD-アミノ酸の生理作用を、分子レベルで明らかにすることを目的とした。 これまでに配列データベースを用いたホモロジー検索により、L-セリンをラセミ化し、D-セリンを生合成する酵素であるセリンラセマーゼのタンパク質に相同なタンパク質が、キイロショウジョウバエだけでなく、セイヨウミツバチやネッタイシマカなど、広く昆虫に存在していることを明らかにした。 令和4年度には、ショウジョウバエの幼虫期から蛹期におけるD-セリンの体内濃度を精密に測定した。具体的には、各成長ステージにおけるD-セリン濃度を微量D-アミノ酸の正確な測定が可能なHPLCを用いた分析系により測定した。その結果、先ず、ショウジョウバエの体内には、L-セリンに対して、D-セリンが0.2~1%含まれていることが明らかになった。また、湿重量当たりのL-セリン量は成長に伴い大きく減少する傾向を示したのに対し、D-Ser量は三齢幼虫期でピークを迎え、緩やかに減少する傾向を示した。この傾向は、既知のカイコ体内のD-セリン変動とは異なっていた。以上より、キイロショウジョウバエおいてD-セリンが存在しており、何らかの生理機能を有していることが示唆された。
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