2021 Fiscal Year Annual Research Report
局所的に送粉環境が異なる山岳地域での、送粉者多様性が植物に及ぼす影響の検証
Project/Area Number |
20K15543
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
江川 信 信州大学, 全学教育機構, 助教(特定雇用) (10837743)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 送粉 / 多様性 / 山岳共生系 / 生態 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、山岳地域の送粉共生系に着目し、送粉者の多様性の減少が植物の種の多様性と形態の多様性に及ぼす影響を評価した。 亜高山帯から高山帯でのマルハナバチとその利用植物のネットワークを目視による観察と虫体付着花粉から記録し、中体付着花粉からのDNA抽出を試みた。まず、乗鞍岳の長野県側2600m地点と1750m地点および1600m地点の3地点に調査地を設定し、7月から9月にかけて花に訪花したマルハナバチを採集し、種名と訪花した植物種名を記録した。マルハナバチの虫体に付着した花粉を部位ごとに採取し(頭部、胸部、脚部および花粉塊)、プレパラート標本を作成し、花粉の形状から植物種を同定しマルハナバチが利用した植物の種数を記録した。 その結果、先行研究と同様に、高山帯では小型のヒメマルハナバチが優占しマルハナバチの種多用度は低く、亜高山帯では5種のマルハナバチが確認されマルハナバチ種の多用度は高いことが明らかになった。ヒメマルハナバチの利用した植物種はハチ種のレベルでは高山帯で亜高山帯より増加したが、個体のレベルでは高山帯、亜高山帯共に2から3種の植物を利用し変化しなかった。また、2019年の観察記録を再解析し、高山帯ではヒメマルハナバチの好まない長い花筒を持つ植物種が減少していることが明らかになった。 本研究の結果は、乗鞍岳の高山帯では、ヒメマルハナバチがハチ種として振る舞うことで、植物の多様性の維持に貢献している一方で、花の形状については制限することを示した。これは、訪花者の多様性の減少は植物種の多様性の減少にはつながらないが、花の形態の多様性を減少させることを示唆するものである。
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