2021 Fiscal Year Research-status Report
通し回遊種の空間分布予測モデルと食物網評価に基づく魚道設置適地の推定
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20K15545
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
齋藤 稔 山口大学, 大学院創成科学研究科, 助教(特命) (20869474)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 通し回遊 / 河川内分布 / 堰堤 / 魚類 / 甲殻類 / 環境DNA |
Outline of Annual Research Achievements |
魚道設置・改修による遡上阻害の緩和が生息場復元に大きく寄与する河川の流域を抽出し,魚道の設置効果を事前に推定可能とする手法の確立を目指して研究を進めた。前年度に引き続き、島根県西部の高津川水系を対象として、潜水目視・タモ網採集・環境DNA分析(水中のDNA含有物質から対象種の在・不在や地点間での相対的な多寡等を推定可能な手法)を用いて、魚類とエビカニ類の河川内分布を調査した。あわせて、堰堤の実測調査を実施した。前年度の小瀬川の調査結果を踏まえて高津川水系にて支流を中心に調査定点を増やした結果、52定点にて、淡水産の魚類30種、エビカニ類12種が確認された。そのうち、魚類11種、エビカニ類10種が海と川とを行き来する通し回遊種であった。小瀬川水系における調査結果を用いて種ごとの分布パターンと堰堤の関係を解析した。クラスター分析の結果、通し回遊性の魚類とエビカニ類は、堰堤の影響度合いが異なる3群にまとめられた。文献にて遡上が可能であると報告されている高さの堰堤であっても、その数が多い場合、特に遡上能力が高いことが示されたオオヨシノボリやモクズガニといった種の河川内分布を制限することが示された。また、高津川水系において、堰堤の影響が異なる4地点を選定し、食物網を網羅するよう,粒状有機物・陸上植物・藻類・水生昆虫・エビカニ・魚類等の安定同位体分析用サンプルを採集した。今後、採集した試料の安定同位体比分析を進め、通し回遊種と陸封種の機能群の特定を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度に実施した小瀬川での調査結果を用いて、魚類とエビカニ類の河川内分布と環境要因の関係を分析を行ったところ、支流のデータが重要であることが示された。そのため、より流域面積の大きい高津川水系において、支流を中心に調査地点数をおよそ倍に増やし、対象生物の分布調査を実施し、解析に有用なデータを収集することができた。一方、堰堤の実測調査は、調査実施に適した冬が新型コロナウイルスの感染拡大や所属機関異動の準備と重なったことなどから、やや遅れている。安定同位体サンプルの採集については、夏に出水が続いたものの、秋に実施することができた。ただし、試料の分析準備に関しては、新型コロナウイルスの影響で学生への試料処理依頼が困難であったため、やや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
高津川水系での堰堤の実測調査を引き続き実施する。また、すでに収集を終えた安定同位体サンプルの分析を進め、食物網における機能群の特定を行う。種ごとの分布パターンと環境要因と関係の解析は、小瀬川については実施できているため、引き続き、高津川水系のデータを追加して研究を進める。
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Causes of Carryover |
コロナウイルスの影響で学生への分析補助依頼(人件費・謝金の支出)等ができなかった。そのため、「その他」に計上した食物網の構造を把握するための安定同位体比分析が当初の計画通りに実施できなかった。また、参加予定であった学会がオンライン開催となったため、旅費に未使用額額が生じた。2021年度に実施できたなかった安定同位体分析等は、2022年度に繰り越して実施する。2022年4月より、研究代表者が関東に所在する研究機関に異動した。これを受けて、残りの繰り越し額については、遠方となった調査地(島根県)への堰堤実測調査等の調査旅費に充当する。
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