2022 Fiscal Year Annual Research Report
通し回遊種の空間分布予測モデルと食物網評価に基づく魚道設置適地の推定
Project/Area Number |
20K15545
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Research Institution | Japan International Research Center for Agricultural Sciences |
Principal Investigator |
齋藤 稔 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター, 水産領域, 任期付研究員 (20869474)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 河川 / 河道横断構造物 / 通し回遊 / 魚類 / 甲殻類 |
Outline of Annual Research Achievements |
魚道設置・改修が通し回遊性魚類・エビカニ類の生息場復元に大きく寄与する流域を抽出し,魚道の設置効果を事前に推定する手法の確立を目指して研究を進めた。島根県西部の高津川水系に設定した定点のうち、2回目の調査を実施できていなかった15定点において、潜水目視・タモ網採集にて魚類・エビカニ類の生息状況を調査した。あわせて、堰堤の実測調査を実施した。クラスター分析の結果、出現パターンが異なる4つの種群と種の出現パターンが異なる3つの地点群が認められた。また、中流域において、通し回遊種の遡上が特に制限されていると考えられる流域が抽出された。同流域内の定点では、モクズガニやオオヨシノボリが出現するものの、カジカ科魚類は確認されなかった。これら通し回遊種の分布状況を同時に調査することで、堰堤による通し回遊種の遡上阻害状況を大まかに把握できる可能性が示された。 昨年度までに採集した魚類・エビカニ類やそれらの餌資源となる生物・有機物のサンプルを用いて、窒素と炭素の安定同位体比分析を行った。堰堤の上流側と下流側の定点では、多くの種が同様の餌資源利用パターンを示した。ただし、一部のコイ科の遊泳魚では変化が認められた。モクズガニを除く多くの通し回遊種では、似通った餌資源を利用する非通し回遊種が認められた。そのため、魚道設置・改修にあたっては、モクズガニの遡上阻害を緩和することが、堰堤上流側の食物網構造を復元する上で有効であると考えられた。
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