2023 Fiscal Year Research-status Report
乾燥地における砂丘が周辺の草原植生に与える正の影響
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20K15551
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
宮坂 加理 日本大学, 生物資源科学部, 助教 (00780173)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 乾燥地 / 砂丘地 / 土壌水分環境 / 草原植物 / キャピラリー・バリア / 植生変化 / モンゴル |
Outline of Annual Research Achievements |
以前、寒冷乾燥地モンゴル国の首都ウランバートルから南西に100km離れたフスタイ国立公園において、砂丘地と隣接しているステップ草原の植生量が、砂丘と離れたステップ草原と比較して植生量の多いところが観測されていた。さらに土壌の断面調査を行ったところ、砂丘付近の草原の断面層は、上層が粘質土、下層が砂丘砂であった。大雨の直後の土壌水分分布から、上層と下層の境界では水分量が高くなっており、土層の境界が水の浸透を阻害するキャピラリー・バリアが発生したと考えられた。そこで、同じフスタイ国立公園を対象とし、砂丘と草原の位置関係と植生量を調査し、砂丘の存在によりキャピラリー・バリアが発生し、その結果植生量に影響を与えているのか詳細に調べた。 本年度は、2022年8月に行われた現地調査結果の解析を行った。砂丘とステップ草原の境界面を0mとし、砂丘から0m、3.6m、7.5mにおいて1m×1mの格子内を植生種毎に上部刈取を行う植生調査を3反復ずつ行った。刈取後は植物を乾燥させ、乾土重量の測定を行った。植生種は図鑑を参考にし、乾燥を好む種、湿地を好む種、両方を好む種の3種類に分類した。また、砂丘から0m、3.6m、7.5mにおいて土壌サンプリングによる含水比分布を1~2反復採取した。植生調査の結果、砂丘と草原の境界から離れるにつれて、植生量は減少していた。境界では湿地を好む植生も見られた一方で、3.6m、7.5mではほとんど見られず、乾燥を好む植生が増加した。土壌調査の結果では表層に粘質土が少しかぶっているものの、ほぼ砂質土であり、3.6mでは深度0-40cm程度が粘質土、40-90cm程度が砂質土、それ以深は再度粘質土であった。7.5mでは、130cmより上部が粘質土、下部が砂質土であった。含水比分布も土層の境界周辺で水分量が高くなっていた。以上から、砂丘の存在によりキャピラリー・バリアが発生していること、また砂丘に近いほど植生量が増加することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020、2021年に予定していた調査がコロナ禍により中断されたため、遅れがでている。しかし、2022年夏から現地調査を開始することができ、現地調査から得た結果も良好であった。この結果を元に2024年の現地調査を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年で得た結果と解析結果をもとに、フスタイ国立公園とエルセン・タサルハイでの調査を引き続き行う予定である。土層の境界深度が重要であることがわかったことから、土性の調査をしっかり行う予定である。
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Causes of Carryover |
2020年、2021年に予定していた調査ができなかったため、また2023年は育児休業により調査ができなかったため、次年度の使用額が発生した。 2024年度では、夏季期間中にモンゴルの砂丘地で調査を行う予定であり、旅費および調査で必要な機器の購入を予定している。
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