2020 Fiscal Year Research-status Report
大気CO2濃度が菌根菌との相互作用を通して光合成機能と樹木群集構造に及ぼす影響
Project/Area Number |
20K15559
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
赤路 康朗 国立研究開発法人国立環境研究所, 生物・生態系環境研究センター, 研究員 (50810256)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 光合成 / 菌根菌 / ブナ林 / 植物-土壌フィードバック |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では冷温帯落葉広葉樹林(ブナ林)を研究対象として,大気 CO2 濃度の増加が主要構成樹種の光合成機能および樹木多様性に及ぼす影響について,菌根タイプの観点から評価することを目的としたものである. 令和2年度は,栽培実験を実施するための試料(ブナ林土壌・ブナ種子)収集および林分構造調査(毎木調査)を実施した.土壌採取については,白山国立公園内のブナ林において,コアサンプラーを用いて主要構成樹種(ブナ・イタヤカエデ・トチノキ)の林冠下の土壌(深さ10~15cm程度まで)を採取した.採取した土壌は4℃で保存した.ブナ種子採取については,白山国立公園内のブナ林のブナが凶作だったため,白神山地(高倉森)に生育するブナ林冠木4個体を対象に採取を行った.採取したブナ種子は水選により選別を行なった.水選の結果として,ブナ種子1135粒のうち水に沈んだ715粒を健全果として保存した.保存に際して,大部分は冷蔵(2℃)による保存を行なったが,長期(1年以上)保存を目的として一部を冷凍(-20℃)保存した. その後,冷蔵保存しておいた種子を滅菌土に播種し,ブナを発芽させた.また,保存しておいた各土壌コアサンプルを二つに分け,それぞれを小ポットに移し,CO2暴露区(700ppm)とコントロール区の栽培土壌を用意した.滅菌土壌で発芽した健全なブナ実生を各ポットに移植し,ガラス温室内にて遮光ネット下でブナを生育させた. 加えて,各実生の初期乾燥重量を推定するため,上記移植時にブナ実生の生重を計測すると共に,実験に使用しない健全実生16個体の生重と乾重を計測した.これら16個体の生重と乾重の平均値は,それぞれ0.49gと0.076gであり,初期の乾燥重量を推定するための回帰式を得ることができた(乾重 = -0.01 + 0.18 × 生重,R2 = 0.96).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
栽培実験に必要な試料を予定通り収集することができ,令和3年度から本実験を開始することができる状態である.
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Strategy for Future Research Activity |
栽培実験を遂行するとともに,令和4年度の栽培実験のための試料収集も行う.
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Causes of Carryover |
天候にめぐまれ,野外調査を少人数・短期間で遂行することができた.繰越分については令和3年度の野外調査費に充てる.また,サンプルサイズが当初の予定よりも大きくなったため,本研究の実験に関わる消耗品にも使用する予定である.
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