2022 Fiscal Year Research-status Report
大気CO2濃度が菌根菌との相互作用を通して光合成機能と樹木群集構造に及ぼす影響
Project/Area Number |
20K15559
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
赤路 康朗 国立研究開発法人国立環境研究所, 生物多様性領域, 研究員 (50810256)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 植物-土壌フィードバック / 光合成 / 菌根菌 / 細根 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、植物の光合成活性や成長に対する大気CO2濃度増加影響が土壌タイプ(同種土壌・他種土壌)で異なるかを検証している。本年度は2021年から温室で生育させているブナ一年生実生42個体を対象に、光合成に関連した計測を主に実施した。まずは、日中の気孔コンダクタンスが二つの大気CO2濃度(約400ppm・700ppm)および三つの土壌タイプ(ブナ林冠下土壌・イタヤカエデ林冠下土壌・トチノキ林冠下土壌)で異なるかを調べた。結果として、CO2濃度700ppmで生育させたブナ実生はコントロール区(約400ppm)よりも日中の気孔コンダクタンスが低下していた。また、ブナ林冠下土壌で生育させたブナ実生の気孔コンダクタンスは他の二つの土壌タイプにおける値よりもやや低い傾向がみられた。各生育大気CO2濃度下における光飽和時の純光合成速度を計測したところ、イタヤカエデ林冠下土壌とトチノキ林冠下土壌で生育させたブナ実生は、CO2濃度700ppmでより高い光合成速度を示した。一方で、ブナ林冠下土壌で生育させた実生では、二つのCO2濃度条件間で同程度の純光合成速度を示した。次に、A-Ci曲線(光合成速度と葉内二酸化炭素濃度の関係)を計測し、ファーカーモデルを用いて最大カルボキシル化速度(Vcmax)と最大電子伝達速度(Jmax)を推定したところ、CO2濃度700ppm・ブナ林冠下土壌の条件でVcmaxとJmaxが低くなっていた。これらのことから、ブナ林冠下土壌での低い純光合成速度は、気孔コンダクタンス、Vcmax、およびJmaxの低下に起因することが示唆された。加えて、Vcmax/Jmax比はCO2濃度700ppmで低かったことから、高CO2生育条件ではルビスコの量・活性が特に低下することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度の実生の栽培失敗により計画に遅延が生じたが、その後の栽培は成功し、データを順調に取得している。
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Strategy for Future Research Activity |
光合成を計測し終わった個体について菌根化率や細根形態の計測を実施する。取得した地上部・地下部のデータをとりまとめ、大気CO2濃度の増加がブナ実生の生育に及ぼす影響について考察する。
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Causes of Carryover |
初年度の栽培の失敗のために全体的に計画にやや遅れが生じている。解体したサンプルの分析(ルビスコタンパクやCNの分析)は次年度に実施することとしたため、それらの分析にかかる消耗品費等の分を次年度使用分として計画した。
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