2020 Fiscal Year Research-status Report
保持林業による生物多様性保全機能を高める保持木選定手法の開発
Project/Area Number |
20K15561
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
山中 聡 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 研究員 (10804966)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 保持林業 / 枯死材性甲虫 / 生物多様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年7月から8月にかけて、北海道空知振興局の保持林業の実証実験地にて「保持木の樹種の違いが枯死材性甲虫類に与える影響の検証」を目的とした調査対象木の選定を行った。また、選定した対象木の中から、3樹種の生立木(カンバ、ミズナラ、トドマツ)と枯死木(カンバ)、コントロール(近くに保持木がない地点に金属杭を設置)をそれぞれ10本(箇所)ずつ選び、衝突板トラップを用いて枯死材性甲虫類を捕獲した。衝突板トラップは1本の木に3つずつ設置し、トラップには、保存液としてプロピレングリコールを入れた。トラップは8月上旬に設置し、設置30日後に回収した。 調査の結果、カミキリムシ類が計25種246個体捕獲された。樹種ごとにみると、最も捕獲個体数が多かったのは枯死木(平均10.3個体、標準偏差5.3)であり、カンバ(平均6.3個体、標準偏差3.6)、トドマツ(4.8個体、標準偏差4.4)、ミズナラ(2.2個体、標準偏差1.9)の順に少なくなり、最も少なかったのはコントロールであった(平均1.8個体、標準偏差1.6)。種数も個体数と同様に、枯死木(平均5.3種、標準偏差1.4)で高く、カンバ(平均3.0種、標準偏差1.6)、トドマツ(平均2.7種、標準偏差1.9)、ミズナラ(平均1.7種、標準偏差0.8)、コントロール(平均1.3種、標準偏差1.0)の順に低かった。 今回の調査からカミキリムシ類の個体数と種数は、生立木よりも枯死木で多い傾向にあることが明らかになった。その一方で、今回対象とした樹種では、生立木でその個体数や種数に明瞭な差はみられなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度より、調査木の選定と調査を実施することができ、カミキリムシ類の種数および個体数と樹種との関係について予備解析を行うことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は調査する樹種を増やし、また調査期間も7月~9月に延長して同様の調査を実施する。これにより、カミキリムシ類各種の樹種ごとの出現頻度の違いや種構成の違いをより詳細に検証する予定である。また、昆虫の樹木利用に関わることが予想される特徴(胸高直径、腐朽度、樹洞の有無など)が異なる対象木の選定を行う。
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Causes of Carryover |
当初、昆虫サンプルの整理のための人件費を計上していたが、今年度は調査で得られる昆虫サンプルの量が少なかったため、研究代表者が自身で実施した。このため、人件費は0となった。 繰越分は次年度の昆虫サンプルやデータの整理のための人件費として支出予定である。
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