2021 Fiscal Year Research-status Report
保持林業による生物多様性保全機能を高める保持木選定手法の開発
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20K15561
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
山中 聡 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (10804966)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 保持林業 / 枯死材性甲虫 / 生物多様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年7月から9月にかけて、北海道空知総合振興局管内の保持林業の実証実験地にて「保持木の樹種の違いが枯死材性甲虫類に与える影響の検証」を目的とした甲虫類の捕獲調査を行った。調査対象木は、6樹種の生立木(カンバ、ミズナラ、トドマツ、ヤチダモ、シナノキ、ホオノキ)と枯死木(カンバ)、コントロール(近くに保持木がない地点に金属杭を設置)とし、それぞれ10~15本(箇所)で衝突板トラップを用いて枯死材性甲虫類を捕獲した。衝突板トラップは1本の木に3つずつ設置し、トラップには、保存液としてプロピレングリコールを入れた。トラップは7月上旬から9月上旬までの2か月間設置した。 トラップにて捕獲された甲虫類のうち、カミキリムシ類とクワガタムシ類、オオキノコムシ類の3グループを対象とし、その出現種数と総個体数が保持木の樹種によって異なるのかを比較した。この結果、カミキリムシ類では、樹種による差は明瞭でなかったものの、枯死木で種数と個体数が高い傾向がみられた。またクワガタムシ類では、ミズナラで種数と個体数が最も高く、次いで枯死木で高い傾向がみられた。オオキノコムシ類では、トドマツと枯死木で種数と個体数が高い傾向がみられた。 今回の調査から、種数と個体数が最も高い樹種はグループごとに異なるものの、どのグループにおいても、カンバ枯死木で種数と個体数が比較的高い傾向にあることが明らかとなった。この結果は本研究で対象とした枯死木はカンバのみであり、枯死木の樹種による違いは未検証であるものの、枯死木を伐採地に保持することがこれらの甲虫類の保全効果を高めるうえで重要であることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に引き続き、調査木の選定と調査を実施することができ、地表性甲虫類の種数および個体数と樹種との関係について解析を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
昆虫の樹木利用に関わることが予想される特徴(胸高直径など)の異なる対象木にて同様の調査を実施する。これまでの結果を総合して、枯死材性甲虫類の種ごとの出現頻度の違いや種構成の違いと保持木の関係をより詳細に検証する。
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Causes of Carryover |
昨年度の調査用具が引き続き利用できたほか、昆虫サンプルの整理作業を研究代表者自身が行ったため、予算の削減が可能だった。 来年度はこれまでのサンプルおよび調査結果のデータ整理のための人件費として支出予定である。
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Research Products
(1 results)