2020 Fiscal Year Research-status Report
Study about influence to root uptake by supplying of radiocesium to deeper mineral soil by stemflow
Project/Area Number |
20K15563
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
今村 直広 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (30732383)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 交換態の放射性セシウム / 根元周り / 樹幹流 / 深部浸透 / 経根吸収 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、樹木に吸われやすい放射性セシウムが樹幹流により土壌深部へ供給されること、土壌深部に存在するこれら放射性セシウムが樹木に吸収されることを明らかにする。これらから、材の放射性セシウム濃度変化は、樹幹流による放射性セシウム供給が引き起こしていることを解明する。 今年度は、福島県川内村の材の濃度が増加傾向にあるサイト(増加サイト)と材の濃度が安定傾向にあるサイト(安定サイト)において、各サイト5本のスギを対象に、東西南北4方位の根元周りの落葉層と深さ25 cmまでの鉱質土壌の採取を行った。さらに、これらサンプルを酢酸アンモニウムで抽出し、樹木に吸われやすい交換態の放射性セシウム蓄積量の分布状況を調査した。その結果、両サイトとも樹幹流が流入する方位で、土壌深部における交換態の放射性セシウム蓄積量が多かった。さらに、交換態の放射性セシウムの土壌深部における存在割合は、安定サイトよりも増加サイトの方が高かった。また、両サイトに林内雨調査プロットを作成し、月に1度の頻度で樹幹流と樹冠通過雨の放射性セシウム濃度を調べたところ、安定サイトよりも増加サイトの樹幹流の放射性セシウム濃度が高かった。これらから、安定サイトよりも増加サイトの方が樹幹流により供給される放射性セシウム量が多く、より多くの放射性セシウムが土壌深部へ供給されることが明らかとなった。このことは、樹木の経根吸収量の違いを解明するための重要な鍵になると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
観測プロットの設置やサンプルの採取、分析が計画通り進捗した。また、当初の予定より早く、放射性セシウム吸収量の推定に利用できるセシウム同位体比法の開発にも成功した。本手法は、材と土壌の交換態の放射性セシウム濃度と安定同位体セシウム濃度を用いて、経根吸収量と葉面吸収量の分離する手法である。本手法を応用することで、放射性セシウムの経根吸収量を推定できる可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、土壌深部に存在する交換態の放射性セシウムを、樹木が吸収していることを明らかにする。次年度は、根元周りの土壌に存在する細根量を調査し、細根分布状況を明らかにする。また、土壌断面調査を実施し、樹幹流の浸透深さと吸収根との関係を明らかにする。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は、端数のために生じた。 次年度は、樹木の根本周りの細根分布調査を主に行う。次年度使用額は、助成金と合わせて、調査道具の購入、調査地への旅費、サンプルの下処理のための謝金代として使用する予定である。
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