2022 Fiscal Year Annual Research Report
リグニンおよびヘミセルロースが担う力学的役割を木材の加工性の観点から探る
Project/Area Number |
20K15570
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
三好 由華 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (50781598)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 動的粘弾性 / 有機液体 / リグニン / ヘミセルロース |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度は、水および有機液体の脱着過程における無処理、脱リグニン処理および脱ヘミセルロース処理ホオノキ試験片の動的粘弾性測定を行い、過去に同条件で測定した曲げクリープの結果と対比させて、流動変形へのリグニンやヘミセルロースの影響を考察した。無処理および脱リグニン処理試験片では、動的粘弾性測定で得られた損失弾性率(0.1Hz)の増加が大きい条件ほどクリープ変形量も大きく、両者におおよその関係性があることが明らかになった。また、脱ヘミセルロース処理試験片の曲げクリープ試験で認められた著しい流動変形の増加には、木材細胞壁内のセルロースとリグニンの相互作用が低下することによる両成分の界面における滑りが関与することを後押しする結果が新たに得られた。 全期間で得られた結果から、木材中でリグニンとヘミセルロースが担う力学的役割について考察を行った。ヘミセルロースはリグニンとセルロースを繋げて両成分の発現する力学特性を伝達し、主要三成分が一体となって細胞壁の力学特性を発現するために不可欠な役割を果たしていると考えられた。リグニンは細胞壁の非晶領域の質を支配し、細胞壁の非晶領域に由来する力学特性を主として決定づけていると考えられた。得られた見解は、低エネルギーで木材を大きく変形させるためにどのような化学処理を木材に施せば効率的に加工が可能かといった、木材の加工性を高度に制御するための基礎的知見として活用できる。
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