2020 Fiscal Year Research-status Report
海産付着動物の着底場所選択性に関わる遺伝的基盤の解明
Project/Area Number |
20K15576
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
頼末 武史 兵庫県立大学, 自然・環境科学研究所, 准教授 (50766722)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 着底 / 幼生 / 付着生物 / フェロモン / 蛍光タンパク質 / フジツボ / 飼育実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
海産無脊椎動物の幼生は着底時に同種個体に由来する化学因子や視覚情報などを利用して着底場所を選択している。着底場所の選択性は環境要因の変動やエネルギー貯蔵量などの生理状態の変化に伴って変化することが考えられるが、そのメカニズムは未解明である。本申請課題では、室内での着底実験および野外での加入実験と遺伝子解析を通し、着底場所選択性の変化に関する分子基盤を解明する。 まず着底研究のモデル生物であるフジツボ類を対象に、室内着底場所選択実験に用いる着底誘起物質の精製および組換えタンパクの作成を試みた。フジツボ類では基盤吸着性および拡散性のタンパク質性フェロモンが同定されている。そのうちタテジマフジツボの拡散性フェロモンについて、大腸菌の発現系を用いた組換えタンパク質の作成を行った。共同研究者らの研究により、この組換えタンパク質はフェロモンとしての活性を有することが明らかになっている。また成体の殻に存在し、幼生の着底を誘起すると考えられている赤色蛍光タンパク質の精製を試みた。その結果、ゲル濾過精製で強い赤色蛍光を持つフラクションが得られている。 また先行研究を参考に、ウニの巣穴に共生するカザガイ類を用いた簡便な幼生飼育および着底実験系の確立を試みた。先行研究よりも換水頻度を落として幼生飼育を実施したが、着底実験に利用できる状態の良い幼生が十分に得られず、さらなる飼育条件の検討が必要であることがわかった。 また、深海性フジツボ類の幼生分散と着底機構に関する研究のレビュー論文を発表し、幼生の着底機構に関する今後の課題についてシンポジウムでの発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
着底場所の選択実験に用いるフジツボの着底誘起フェロモンの組換えタンパク質を作成することができた。また、幼生の着底を誘起すると考えられている赤色蛍光タンパク質の精製も順調に進んでおり、2021年度以降室内実験によるデータの蓄積が見込まれる。さらにフジツボ以外での実験系の確立にも着手し、課題はあるものの概ね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
着底誘起物質が得られているフジツボ類を中心に、計画通り室内での幼生着底場所選択実験を実施していく。また、2021年度以降も軟体動物やサンゴを用いた実験も計画しており、着底場所選択性の変化に関わる分子基盤の一般性を解明していく。 野外実験についても2021年度に和歌山と京都のフィールドでの加入実験を予定しており、遺伝子解析に用いるサンプルの採集を行っていく。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染拡大と緊急事態宣言の発出に伴い、年度内の出張が困難になったため、次年度に出張を延期したため。
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