2020 Fiscal Year Research-status Report
高精度位置情報に基づく個体間相互作用から明らかにする魚類の群れのネットワーク構造
Project/Area Number |
20K15579
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Research Institution | National Institute of Polar Research |
Principal Investigator |
高木 淳一 国立極地研究所, 研究教育系, 日本学術振興会特別研究員(PD) (00838526)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 群れ行動 / バイオテレメトリー / 高精度測位 / 音響測位 |
Outline of Annual Research Achievements |
<野外実験> 2020年8月に高知県中土佐町上ノ加江に設置されている角型生簀(縦12m x 横12m x 深度6m)で行った。対象種はチョウチョウウオとした。大きさをある程度揃えた本種8個体に3秒間隔でIDと深度情報を発信する小型超音波発信機を外部装着し、約89時間の連続観察を行った。6個体の高精度・高頻度の3次元位置データの取得に成功した。残念ながら2個体は発信機の不具合でデータが取得できなかった。 <データ解析> 6個体の3次元位置から、本種は主に生簀四隅の底部付近に居着いたことが観察された。生簀辺縁部を遊泳しながら分離・集合を繰り返し、全体として緩やかな群れを形成していた。夜間には、6個体の群れを崩さずに生簀全体を大きく遊泳する様子も観察された。そこで全個体の1時間ごとの速度・最近接個体間距離(NND)・乖離遊泳指数(SSI)の平均値を調べたところ、そのタイミングで密になり、かつ同調して遊泳していたことが示された。本結果を2021年3月にオンライン開催された日本水産学会春季大会において口頭発表した。また各個体の3次元位置計算をこれまで開発してきた手法よりも高精度かつ高速に実現するため、双曲線測位における新規計算手法の開発を行った(論文執筆中・投稿予定)。また、個体間の同調度を評価する指標については、今年度の解析にはNNDとSSIという既存指標を用いたが、それ以外にも差分ベクトルを用いた指標の検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたデータとほぼ同等のデータを野外調査によって得ることができた。解析においても群れ行動に焦点を当て、観察結果を定量的に評価することができたと考える。また、個体間の同調度を評価する指標については、既存の最近接個体間距離と乖離遊泳指数を用いたが、それ以外にも差分ベクトルを用いた指標の検討も進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
チョウチョウウオを対象種として、野外実験を引き続き行う。解析の方針としては、対象とする群れの全個体のデータを取得できるようにして、今年度はできなかった同調度を評価する指標を用いて、群れ全体のネットワークを記述する。
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Causes of Carryover |
打ち合わせのための出張を予定していたが、新型コロナウィルスの影響によりオンラインで済ませた。翌年度分と合わせて、物品費もしくは旅費の補填として使用する計画である。
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