2020 Fiscal Year Research-status Report
紅藻スサビノリと付着細菌のインドール酢酸を介した共生機構の研究
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20K15583
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
松田 竜也 熊本大学, くまもと水循環・減災研究教育センター, 特別研究員 (00849086)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | スサビノリ / 付着細菌 / Neptunomonas / インドール酢酸 / 遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
養殖ノリであるスサビノリには多数の細菌が付着しており,その一部はスサビノリの生育を促進させる有用な細菌であるとされる。本研究では,薬剤処理した葉状体の成長を部分的に回復する細菌Neptunomonas sp. BPy-1(NBRC108560)について植物の生長促進因子の一つであるインドール酢酸 (IAA) に着目し,その代謝経路を明らかにし,スサビノリをどの成長促進の機序を解明する事を目的とする.R2年度はNeptunomonas sp. BPy-1(NBRC108560)の全ゲノムシーケンスを行い,インドール酢酸 (IAA) 合成関連遺伝子を探索した.代表的な既知の細菌IAA合成酵素の遺伝子配列を元に相同性検索を行った結果,いくつかの相同な遺伝子配列を得た.細菌のインドール酢酸合成はトリプトファンを起点とした主に4つの代謝経路(IPA経路,TAM経路,IAM経路,IAN経路)が知られている.これらのうちIAM経路の2つの合成酵素(iaaMおよびgatA)の相同遺伝子はBPy-1のゲノム中に保存されていたが,他の代謝経路ではいくつかの合成酵素が欠落しており,代謝経路が完全ではなかった.従ってBPy-1のIAA合成はIAM経路を用いて行われていることが示唆された.IAM経路の合成酵素について,遺伝子発現の有無を調べるため,BPy-1をマリンブロス培地で培養し,RT-PCRを行った.その結果iaaM-like遺伝子およびgatA-like遺伝子両方とも発現が見られた.次に人工海水中での遺伝子発現を調べた.人工海水中には炭素源が含まれていないため,ブドウ糖のみを添加して培養を行った所,両遺伝子とも発現していた.人工海水中で発現があったことから,ノリ培養液中でもトリプトファンが供給されるとIAAを合成可能であることが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細菌のゲノムシーケンスより,IAA合成系の遺伝子を見出すことができ,その発現を確認することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
トリプトファンの有無により遺伝子の発現量が変化するか定量的PCRで調べる.また,それぞれの代謝系の中間体を添加し,IAAが合成されるか,遺伝子発現に増減が見られるか調べる.また,陸上植物で用いられるIAA輸送体の阻害剤の添加し,その効果を調べる.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大により参加予定の学会が中止になり,旅費が不要であったため.また,ゲノムシーケンスが予定より安く済んだため. 今後は他の付着細菌についてもゲノムシーケンスを実施し,比較を行う.
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