2022 Fiscal Year Research-status Report
極小の単細胞ピコ藻類における生活史ステージ転換現象の究明
Project/Area Number |
20K15585
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
山田 和正 福井県立大学, 海洋生物資源学部, 助教 (20778401)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 栄養細胞 / 生活史 / 世代交代 / セルソーティング / 増殖 / パルマ藻 / ボリド藻 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,極域や亜寒帯海域での生態学的な重要性が示されつつあるシリカ被殻を持つパルマ藻Triparma属に注目している.本藻類は,生活史中に少なくとも二つのステージ,すなわち,シリカの殻を持ち無鞭毛の不動性ステージと,鞭毛を持ち無殻の遊泳性ステージを持つ.本研究では,両ステージの生理学的な違いとステージ転換の仕組みを理解するため,培養株を用いた研究を進めている. 前年度までの細胞増殖解析から,不動性ステージと遊泳性ステージの混在株中では,現在用いている人工海水を用いた培養条件下では,どちらのステージも独立に細胞増殖をしている可能性が示されていた.検証が不十分であった遊泳性ステージの細胞分裂について,形態学的な解析を進めた結果,核を2つ持ち,鞭毛数が倍加している分裂中の細胞が顕微鏡下で捉えられた.これは遊泳性ステージが二分裂により細胞増殖をしている直接的な証拠と考えられるが,単離した遊泳ステージについては安定な継代培養には至っておらず,培養条件の検討を進める必要がある. また,研究対象の株と分子系統的にごく近縁で,不動性ステージを進化の過程で二次的に失ったと推測されている培養株の遊泳性ステージと,両ステージ混在株中の遊泳性ステージについて形態学的な比較を進めた.その結果,遊泳性ステージのみからなる株と比べ混在株中の遊泳性ステージは葉緑体の体積が顕著に小さいという結果が得られた.今後,両者の光合成や混合栄養の活性について検証を進めることで,生理生態学的な戦略の違いとの関連を精査する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
混在株中の不動性ステージおよび遊泳性ステージの細胞増殖やステージ転換に関する動態,また細胞形態学的な比較解析は順調に進展したが,遺伝子発現の比較解析については,混在株中から単離した遊泳性ステージの培養や,両ステージの分離・濃縮の操作が難航し,本研究費の補助事業期間を1年延長することとなったため.
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は,途中段階にある発現遺伝子のステージ間比較を集中的に進める.遊泳性ステージの細胞密度が極めて低いという問題があったが,混在株中の培養上清に遊泳性ステージが集積していることが確認されたことから,大量に培養した混在株の上清を回収することで遊泳性ステージを予め濃縮した細胞懸濁液を作製後,セルソーターによる細胞分取を行うことで対処する.
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Causes of Carryover |
遺伝子発現解析の進行が遅れ,次年度使用額が生じた.解析に関わる物品の購入および成果発表に用いることを計画している.
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