2020 Fiscal Year Research-status Report
どのような仔魚が、なぜ生き残るのか:サバ・イワシ類の3D行動解析実験
Project/Area Number |
20K15590
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Research Institution | Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
中村 政裕 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水研機構(廿日市), 研究員 (00781832)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 成長率 / 運動能力 / 浮魚 / 仔稚魚 / 行動解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、マサバ・マイワシ・カタクチイワシの仔稚魚について、成長速度と運動能力の関係を明らかにするとともに、それと捕食回避との関係も調べることで、仔稚魚の成長速度に関連した生き残り戦略を体系的に明らかにすることを目的とする。2020年度は、マサバ・カタクチイワシの仔稚魚において、成長速度と運動能力の関係を検証する実験を行った。
マサバでは当初の予定通り3Dによる検証を行い、仔稚魚の運動能力と成長率がドーム型の関係にあるという、これまでに報告の無い関係があることを突き止めた。これまでに実験動物を使って行われた研究では、両者が負相関もしくは無相関するという報告しかなく、正相関が含まれる関係を明らかにした点は本課題の重要な成果であると考えられる。これについては、データ解析を完了し、論文を投稿中の段階である。
カタクチイワシについては、当初の予想よりも仔魚がハンドリングに弱く、3Dによる検証が困難であった。そのため、本種については2Dのシステムによって検証を行った。その結果、高水温では成長速度と運動能力が負相関するという既往知見と一致する結果を得た。一方で、中間的な水温ではその関係が消失し、成長速度と運動能力が無相関するという結果も得られた。このことから、成長率と運動能力の関係は水温によって変化することが示唆された。カタクチイワシについては2021年度により幅広い水温での実験を実施し、より包括的な知見を得る予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カタクチイワシ仔魚については当初予定していた3Dでの検証が困難であったため、2Dでの検証を行った。「成長率と運動能力の関係を明らかにする」という、本課題の本質的な部分には取り組めているため、この点は大きな問題ではないと考えている。新型コロナウィルス感染症の情勢による研究の進捗への影響は生じなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
マイワシについても同様の検証を行うとともに、得られた成長率と運動能力の関係の関係が実際の捕食回避とどう結びつくかを検証するためのメソコスム実験を行う。また、カタクチイワシについては、より幅広い水温で実験を行い、成長率と運動能力の関係が水温によって変化するか否かを検証する。
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Causes of Carryover |
当該年度に行う予定であったメソコスム実験を来年度に行うことにしたため、次年度使用額が生じた。この予算はメソコスム実験に関わる費用として使用する計画である。
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