2022 Fiscal Year Annual Research Report
イルカの胃病変にヘリコバクター属細菌は関与するか?ーVacAを指標に-
Project/Area Number |
20K15598
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
瀬川 太雄 日本大学, 生物資源科学部, 助教 (50755600)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | イルカ / ヘリコバクター / VacA |
Outline of Annual Research Achievements |
イルカにおいて胃潰瘍等の胃病変は難治性疾患の一つであり,その原因としてヘリコバクター属細菌の関与が長年疑われている.これまでにイルカはHelicobacter cetorum(HC)および申請者が発見したHelicobacter delphinicola(HD)に感染することが明らかになっているが,未だにイルカの胃病変発生に関わるか明らかになっていない. 申請者のこれまでの解析によりHCおよびHDは,胃病変を惹起する物質であるVacAと類似した物質を産生することが確認されている.しかし,HCに関しては胃疾患症状のないイルカ類においても保菌率がほぼ100%であることから,HCが産生するVacA様毒素に対してイルカ類は感受性を示さない可能性がある.そこで本研究は,イルカ類がHC産生のVacA様毒素に対する受容体を保有するか調査した.まずイルカ由来腎培養細胞に2株のHC産生VacA様毒素を暴露すると,明瞭な細胞死が確認された.この結果よりイルカはHC産生VacA様毒素に対する受容体を保有することが明らかになった.次にその受容体の同定を試みたところ,株間でVacAの受容体が異なることが明らかになった.一株はピロリ菌と同様の受容体を介して毒素活性を示していたが,もう一株は本研究では同定できなかった新規の受容体を介して毒素活性を示していた.またHDの全ゲノム解析を行ったところ,VacA様遺伝子は確認されたが,そのゲノム上の位置関係はピロリ菌やHCと大きく異なっており,HDにはHCには認められないいくつかの分泌機構や細胞接着機構が存在していた.
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Research Products
(4 results)