2020 Fiscal Year Research-status Report
長期的なレプチン投与が魚類の生殖腺発達に与える影響の検証
Project/Area Number |
20K15600
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大賀 浩史 九州大学, 農学研究院, 学術研究員 (60792299)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | レプチンによるGTH分泌調節 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は、マサバ生体への長期的な投与を行うための組換えレプチン(LepA)の大量合成技術の開発を目指すとともに、脳下垂体における生殖腺刺激ホルモン(濾胞刺激ホルモン:FSHと黄体形成ホルモン:LH)産生細胞におけるレプチン受容体(LepR)の共発現の有無を、細胞組織学的な解析により調べた。 LepAの合成では、大腸菌発現系により約2 mgの組換えホルモンが得られた。また、これまで合成することが困難であった魚類レプチンのサブタイプであるLepBの合成に成功した。これらのホルモンはいずれも哺乳類細胞に発現させたLepRに対するシグナル伝達能を示したことより活性が認められたが、LepBの活性はLepAよりも若干低い傾向にあった。LepBの機能については、いまだに研究例が少なく不明な点が多い。本年度の研究において、LepAだけでなくLepBも安定して合成できる道筋がついたため、これらの組換えホルモンを用いることにより魚類レプチンの生殖における機能解明の更なる進展が期待される。 FSHとLH産生細胞におけるLepRの共発現の有無は、初回成熟前のマサバ雌個体より採取した脳下垂体の凍結切片およびスライドガラスに塗布した脳下垂体初代培養細胞を用いて、二重蛍光標識in situ hybridization法により調べた。その結果、FSHおよびLH産生細胞の両方で、LepRが共発現していることが確認され、レプチンがFSHとLHの分泌調節に直接的に関与することを魚類で初めて明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生体への長期的な投与を行うための組換えレプチン(LepA)の大量合成技術の開発では、当初の計画どおり生体投与試験が可能な量のLepAを合成することに成功した。一方、LepAに付加しているHisタグを用いたタンパク質の精製の段階での試料のロスが想定より多く、改善が必要である。また、封入体タンパク質の巻返しに用いている専用試薬が高価であり、現在の手法を用いての更なる大スケールでのLepA合成にはコスト上の問題がある。専用試薬を用いない透析法などを主とする低コストの合成法の確立が求められる。 FSHとLH産生細胞におけるLepRの共発現の有無は、当初計画通りに進めることができ、非常にクリアな結果が得られた。 以上のことより、今年度の研究では計画段階での目標をおおむね達成することができたため、順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
生体への長期的な投与を行うための組換えレプチン(LepA)の大量合成技術の開発では、Hisタグ精製の段階での試料ロスを減らすために、精製条件等の最適化を進める。また、透析法を主とした低コストの合成法の開発を行う。 次年度からは、大量に合成したLepAを実際に生体に投与し生殖腺の発達に与える影響を調べる研究を推進する予定である。また、最適な投与法を確立するために、当初の計画どおりにELISA法による血中レプチンの測定系を開発し、適切な投与間隔や投与濃度についての基礎的な知見の集積を進める。
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Causes of Carryover |
今年度は、新型コロナウイルス感染拡大防止のために在宅勤務が増えたことや、学会の開催中止による出張回数の減少などにより、実支出額が支出計画よりも大幅に少なかった。次年度使用額については、今年度に行うことができなかった実験のための機器や消耗品類および学会への出張費などに充て、適切に使用していく。
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