2022 Fiscal Year Research-status Report
長期的なレプチン投与が魚類の生殖腺発達に与える影響の検証
Project/Area Number |
20K15600
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Research Institution | Regional Fish Institute, Ltd (R&D Division) |
Principal Investigator |
大賀 浩史 リージョナルフィッシュ株式会社(研究開発部), 研究開発部, 主任研究員 (60792299)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | レプチン分泌動態 / 血中レプチン濃度 / ELISA |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題ではこれまでに、マサバが有する2種類のレプチン(LepAとLepB)について、大腸菌発現系による活性を持った組換えホルモンの大規模な生産系を確立している。これらを初回成熟前のマサバの筋中に反復投与することで、特に雄個体において、精巣の発達を促進する効果が認められた。また、生殖内分泌軸の中枢因子である生殖腺刺激ホルモン[濾胞刺激ホルモン(FSH)と黄体刺激ホルモン(LH)]産生細胞上にレプチン受容体が発現していることをin situ hybridization法で証明した。これは、脳下垂体からのFSHとLHの分泌が、レプチンの直接的な制御下にあることを魚類で初めて明らかにしたものである。 本年度は本種のレプチンが生殖内分泌軸に与える影響のさらなる理解を目指し、その分泌動態を明らかにするために、血中レプチン濃度を測定するためのEnzyme-Linked Immuno Sorbent Assay(ELISA)系の確立を目指した。 2種のレプチンの内、特に肝臓で強い遺伝子発現が認められ、より主要な機能を持つと推定されるLepAについて特異抗体の作製を試みた。抗原に選定した部位のマサバLepAの合成ペプチドをウサギに免疫することで、ポリクローナル抗体を得た。ELISA系の構築については、先行研究を参考にし、プレートに抗原を固相化する間接法をベースとして開発を進めた。 標準品として準備した組換えレプチンを固相化した検量線の立ち上げでは、直線的な検量線が得られたことより、作製したポリクローナル抗体が抗原タンパク質に対して高い特異性を有していることが確認された。一方、マサバから得た血清サンプルを固相化した場合は、バックグラウンドが上昇する傾向が認められ、血清由来の成分が抗原抗体反応を阻害している可能性が示唆された。ELSIA系の確立については、他の測定法の検討が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度は主に、マサバの血中レプチン濃度の測定系の開発に注力し研究を遂行した。しかし、間接法に基づくELISAでは、血清由来成分によるバックグラウンド上昇が問題となり、検体中の目的ホルモンを正しく測定することが困難であると判断された。 本年度は研究代表者の所属の変更があり、新たな所属先における研究体制および研究環境の立ち上げに想定以上の時間を有した。そのため、ELISA系の立ち上げに関して複数の方法による十分な条件検討を行う時間が得られなかった。 当初研究計画では、本年度が研究課題の最終年度である。当初計画では、本年度内にマサバにおける血中レプチン測定系を立ち上げ、本種におけるレプチンの分泌動態および生殖軸に与える影響を総合評価する予定であったため、本研究課題の進捗状況は計画よりも遅れている。 本課題については、研究期間を当初計画より1年延長し遂行する。
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Strategy for Future Research Activity |
マサバの血中レプチン濃度を測定するためのELISA系構築に関して、間接法に基づく測定法では、血清由来成分によるバックグラウンドが高く出てしまい、目的タンパク質の定量が困難であった。間接法では、血清サンプルをプレート表面に直接固相化するため、バックグラウンドが上昇してしまうことが推定された。 今後は、より特異性が高く定量性のある高精度な測定法であるサンドイッチ法への切替えを検討する。サンドイッチ法では、抗原タンパク質の異なる部位を認識する2種類の特異抗体が必要である。現在、すでに保有している特異抗体とは別の部位を認識する新たな抗体の作製を進めている。 また、新たに作製した抗体の特異性が低いと判断された場合は、現在保有している特異抗体をプレートに吸着させた後に、酵素標識した抗原と測定サンプルを競合させる競合法に基づくELISA系の構築を進める予定である。
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Causes of Carryover |
今年度は、課題代表者の所属先変更に伴い、新たな所属先における研究体制および研究環境の構築に想定以上の時間を有したため、当初計画どおりの研究活動ができなかった。本課題は1年間の研究期間延長を申請する。今年度に執行することができなかった研究予算については、次年度に計画している研究活動および学会への出張費などに充て、適切に使用していく。
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