2020 Fiscal Year Research-status Report
ケミカルバイオロジーによる紅藻由来ポリエーテル類縁体の産生意義の解明
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20K15601
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
熊谷 百慶 鹿児島大学, 農水産獣医学域水産学系, 助教 (70863083)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | チルシフェロール / ソゾ / ポリエーテル / 構造活性相関 |
Outline of Annual Research Achievements |
ソゾ属の海藻は、特異な構造を有する含臭素トリテルペンポリエーテルであるチルシフェロールおよびその類縁体を産生する。チルシフェロール類の構造的特徴として、共通骨格である連続するABC環と様々な構造の側鎖部位を有することが挙げられる。本研究では化学合成によって供給された、立体配置が明確に決定されたチルシフェロール類縁体を用いて、立体配置特異的な細胞増殖抑制効果を調べることにより、非特異的な活性を排除した真の生物活性を見出すことおよびその作用機構を明らかにすることを目的とした。本年度の研究において、まずはチルシフェロール類縁体であるユーボールと、その鏡像異性体を用いてP388細胞に対する細胞増殖抑制効果を検証した。その結果、天然物のユーボールは、その鏡像異性体に対して1000倍以上強い細胞増殖抑制効果を示した。そこで、チルシフェロール類縁体のABC環部位と側鎖部位について構造変換した種々の類縁体を用いてアッセイを行ったところ、チルシフェロール類縁体の共通骨格であるABC環の構造が活性発現に極めて重要であることが示唆された。この活性は、他の細胞種(HeLa, HT-29等)では認められなかった。ABC環のみを有する類縁体とその鏡像異性体を試験したところ、天然物の立体配置を有する化合物がその鏡像異性体に対して10倍程度高活性を示した。そこで、このABC環のみの構造を有する類縁体をアフィニティービーズへと結合し、P388細胞の抽出液からの標的分子の精製を試みた。天然型およびその鏡像異性体のABC環構造を結合したビーズを用いて、ビーズ結合タンパク質を回収し、SDE-PAGEに供し銀染色を行ったところ、双方のビーズに結合することが予想されるタンパク質の複数のバンドが得られた。現在、明らかに天然型ビーズのみで強く認められるバンドは得られておらず、条件検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では、ビーズに固定化するための類縁体の選別と、実際にそれを用いたアフィニティービーズの作成及び標的タンパク精製を計画した。構造活性相関研究の結果、ビーズに固定化するための類縁体選別について、ABC環構造が活性発現に極めて重要であることを見出した。さらに、ABC環のみの構造でも活性が発現することを確認した。そこで天然物の立体配置を有するABC環とその鏡像異性体のABC環を結合したアフィニティービーズを作成した。これらのビーズを用いて得られた結合タンパク質の差を解析するアプローチについて現在実験を進めており、標的タンパクの同定には達していないが、おおむね当初予定した計画どおりに進行していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
作成したアフィニティービーズを用いた標的タンパク質の精製条件を精査し、天然型のABC環構造を認識する標的タンパクの精製と同定を行う予定である。また、今回ビーズ固定化したプローブ分子の活性が天然物に比べて弱いことが原因で標的タンパク質がうまく精製できない可能性が考えられた。そこで、天然物の作用機構について別のアプローチからも検討する。細胞に天然型の立体配置を有するチルシフェロール類縁体またはその鏡像異性体を作用させた際に発現する遺伝子の差について網羅的な解析を行い、その作用経路および標的タンパクを推定する。
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Causes of Carryover |
2020年度に購入予定であった消耗品等の購入が研究の進捗状況により次年度へと繰り越された。また、学会発表がオンラインとなり、旅費の支出がなかったため未使用額が生じた。本年度は、繰り越した消耗品の購入および学会参加のための旅費の計上を計画している。
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