2022 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトデ幼生の自己・非自己認識に関わる種特異的糖鎖の探索
Project/Area Number |
20K15602
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
古川 亮平 慶應義塾大学, 文学部(日吉), 助教 (90458951)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 棘皮動物ヒトデ / 自己非自己認識 / 個体発生 / 幼生 / 成体 / 変態 / レクチン |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者の先行研究により、棘皮動物イトマキヒトデの幼生において唯一の免疫細胞である間充織細胞が、生きた同種細胞であれば免疫応答を生じない「missing-species(種の喪失)認識」によって自己と非自己を識別している可能性が示唆されている。この認識システムを可能にするには、自己マーカーに相当する種特異的な分子の存在が必要であるが、予備データからこの分子が何らかの糖鎖であることが示唆されていた。 本研究は、イトマキヒトデの精子を材料に、幼生のmissing-species認識を可能にする種特異的な糖鎖を探索し、その単離・同定を目指すものであるが、各種レクチンを結合させた生きた精子を幼生体内に顕微注射しても、間充織細胞による貪食活性はコントロールと有意差は認められなかった。一方、同じレクチンで染色した精子を用いた場合においても貪食活性にばらつきが認められたことから、レクチン染色時の操作による精子の生存率の低下によって、死細胞に対する免疫応答の活性化として検出された可能性が推測された。また、各種糖鎖切断酵素で処理した精子の生存率も高いとは言えず、自己マーカーに相当する種特異的な分子が何らかの糖鎖であることを示唆する予備データの信頼性が疑われた。 そこで、研究対象を、体制が単純で細胞種の少ない幼生から変態後の成体に変更し、まず成体においてもmissing-species認識が維持されているかを確かめた。成体に対して、同種異個体の免疫細胞を移植したところ、成体の免疫細胞は同種異個体の細胞に対して免疫応答を生じることが明らかとなった。この事実は、免疫系の認識対象が、変態の前後で種特異性から個体特異性に変化していることを示している。さらに、幼生の解離細胞による再構築現象を利用して作製したキメラ幼生を変態させると、このキメラ個体が稚ヒトデ期に全滅することも明らかになった。
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Research Products
(2 results)