2020 Fiscal Year Research-status Report
マイクロ流路によるシングルセルmRNA解析技術を用いたクルマエビ造血幹細胞の探索
Project/Area Number |
20K15603
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
小祝 敬一郎 東京農工大学, 学内共同利用施設等, 特任助教 (10867617)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | クルマエビ / 血球細胞 / Drop-seq / シングルセル解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでも多くの研究者によりクルマエビ類細胞の初代培養の試みがなされてきたが、継代培養に成功した例がない。細胞の培養条件を明らかにするには、目的とする細胞がどのような分化機構を辿るかを理解することが重要である。 本研究では、末梢血液中および造血組織中に存在する血球細胞それぞれを、1細胞レベルで集団解析し細胞ごとの分化度を調べることで、どのように造血組織の造血幹細胞が末梢血液中の血球細胞へ分化するかを理解することを目的とする。シングルセル解析を行うことで高い解像度で細胞のサブポピュレーションを分類し、その中から目的の幹細胞の同定が可能になる。 本研究は、クルマエビ類血球細胞の分化機構を解明することを目的とする。そこで、1細胞と個別バーコード配列を持ったビーズを微小な液滴内で反応させ解析するDrop-seqを用いて、造血組織および末梢血液中の細胞の遺伝子発現パターンを1細胞レベルで解析・分類しその分化度を調べることで、造血組織中の造血幹細胞を同定し、どのように末梢血液中の血球細胞へ分化するか解析する。 Drop-seq法はこれまでのバルクでの研究とは異なり、組織中の細胞を1細胞レベルにデジタル化した解析が可能である。しかし、市販の機器では条件が定まっておりパラメータ検討ができないため、非モデル生物であるクルマエビへの適用には試薬の浸透圧や流路の設計において問題が生じる。そこで、本研究ではDrop-seq法に必要な流路システムを自ら設計・開発することで流路幅や流路のデザイン、送液手法などのパラメーターをクルマエビ血球細胞に最適化する。 本年度は自作したマイクロ流路を用いて、クルマエビ末梢血中の血球細胞のDrop-seqを実施した。研究の結果、クルマエビの血球細胞2500個以上からmRNAを解析することに成功した。さらに血球細胞を転写産物に基づき分類し、その分化経路を予測することもできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度でDrop-seqをクルマエビにおいて実施する体制を整えた。調整したセットアップは他の組織などにも汎用可能であるため、今後の造血組織での研究をスムーズに進めることができる。また、末梢血中の血球細胞においてDrop-seqを実施することができた。解析の結果、末梢血中での血球細胞の分化経路を推定できた。さらに、分類された各血球細胞集団のマーカー遺伝子や機能の推定された。これらの結果は今後の血球細胞培養にむけての重要な情報となるうえ、血球細胞が司る生体防御機構を解析する際にも重要な知見となる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、造血組織でのDrop-seq実施に注力する。そのため、組織からの単一細胞の調整手法やその保存方法の検討を実施する。また、末梢血中Drop-seqから推定された血球細胞分化制御因子の発現パターンなどを調査し、血球細胞培養に向けての研究を進める。
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Causes of Carryover |
コロナの影響により当初予定していた旅費が余ってしまった。学会等に参加するため年度末まで予算を確保していたが、思っていた以上に影響が長引き、結果として使用することが出来なかった。 翌年度において、物品費への支出を増やすことを念頭に予算の振り分けを再考する。
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