2020 Fiscal Year Research-status Report
限定的な情報処理能力を考慮した食料消費行動モデルに基づく差別化戦略の再検討
Project/Area Number |
20K15608
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Research Institution | Policy Research Institute, Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries |
Principal Investigator |
伊藤 暢宏 農林水産省農林水産政策研究所, その他部局等, 研究員 (70845883)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 米消費 / 探索行動 / 価格弾力性 / 購買パターン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、多様な米の商品について、消費者の情報処理能力や選択肢集合の形成及び貯蔵可能性を考慮してその選択行動を検討することである。それによって多くの食品で進展している製品差別化戦略の再検討を行う。本年度は、データセットの構築及び価格弾力性の分析、産地交流会が消費者評価に与える影響の分析を行った。また、予備的分析として行っていた米商品の購買パターン分析の結果や解釈のブラッシュアップを行った。貯蔵行動を考慮した米の購買行動及び価格弾力性の計算は、動学的な枠組みを設定する必要があるが、その前段として静学的な枠組みで価格弾力性を計算する必要があると考え、まずはBLPモデルによる価格弾力性の計測を行った。今後推定のブラッシュアップを行う必要はあるが、高級米同士の価格弾力性の値が高く、それ以外の米商品との価格弾力性は低かった。また、手頃な価格な米として設定した商品同士の間では高級米商品同士の間ほど価格弾力性の値は大きくなかったものの、ある程度の大きさの価格弾力性を持っていることが分かった。この結果は米商品の購買パターン分析で得られた結果を定量的に裏付るものとなっており、今後動学的な貯蔵行動を考慮することでこれらの価格弾力性がどのように変化するかを検討する際のベンチマークとできる結果が得られたと考えている。産地交流会の影響分析については、消費者異質性を考慮した離散選択モデルを用いて分析を行い、イベント実施産地の商品への評価の向上を確認できた。また、文献のサーベイも行い日本の米消費について、探索行動や銘柄の異質性を考慮した研究が乏しいことを確認し、本研究の意義を補強した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は新型コロナウイルスの影響等でPCの入手が遅延したことやそれに伴ってデータセットの構築が難航したこともあり、分析作業にやや遅れが生じている。しかし、PC入手後のデータセットの構築は概ね順調に進んでおり、次年度も引き続き作業を継続することで計画を遂行できると考えられる。また、ブラッシュアップが必要であるものの、前述の通りBLPモデルによる米商品同士の価格弾力性の計測や産地交流会の分析も行うことができており、大きな問題はないと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、予備的分析として行っていた米商品の購買パターン分析に関する分析のブラッシュアップを完了させ、学会誌への投稿を行う。動学的な枠組みを用いて、貯蔵行動を考慮したパネルデータ分析を行うべくモデルの構築、実装作業に取り掛かる。また、スーパー年鑑を入手し、小売店舗の立地に関する地理空間データセットの構築を進めて、空間計量経済学を用いた小売店舗の立地と価格設定に関する分析の他、機械学習を適用することで、過去データから消費者の参照価格を予測し、消費者行動に与えた影響の分析を行っていく。
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Causes of Carryover |
本年度は新型コロナウイルス感染症の拡大があり、国内外の学会が中止されたりオンラインに変更されたことに加え、そこで生じた空白期間の間に分析の深化を図ることとするため、参加を取りやめたりせざるを得なかった。そのため、次年度以降での参加を行う予定で分析作業を進める計画である。また、既に記述したように、作業がやや遅れているため、論文投稿に係る諸費用等も次年度以降の使用を計画している。また、書籍についても本年度の発注で間に合わなかった分があるため、それらの購入費用として次年度での使用を計画している。
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