2022 Fiscal Year Research-status Report
限定的な情報処理能力を考慮した食料消費行動モデルに基づく差別化戦略の再検討
Project/Area Number |
20K15608
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Research Institution | Policy Research Institute, Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries |
Principal Investigator |
伊藤 暢宏 農林水産省農林水産政策研究所, その他部局等, 研究員 (70845883)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 空間競争 / 価格弾力性 / 探索行動 / 消費者 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、継続して行っていた消費者家計簿データのクレンジングを概ね終了できたことに加えて、消費者の周囲の小売店舗間の競争環境を明確化するために用いる小売店舗立地データの構築を進め、概ね終了させることができた。整備したデータを用いて、シンプルな需要関数を推定し、消費者の周辺に立地しているスーパー等の食料品小売店舗の競争環境が、消費者の食料品(コメ)購買行動に与える影響を検討した。特に、価格弾力性の計測によって明らかとなった価格変化に対する反応度合いは、消費者の周辺に立地する小売店の多さやそれに付随する価格競争の程度によって異なることが示された。居住地周辺の小売店舗数が多く、価格競争が激しいと思われるところでは、価格弾力性は大きく、価格への反応はより大きかった。逆に、居住地周辺の小売店舗数が少なく、価格競争が激しくないと思われるところでは、価格弾力性が小さく、価格への反応は小さくなっていた。また、高価格でハイブランド品として認知されている商品のみを継続的に購入し、安価な代替品を含めてあまり商品探索を行っていないと思われる消費者については、価格弾力性が0近傍であり、価格反応はほぼ見られなかった。競争環境による価格反応の違いやブランド銘柄に対する評価の安定性に加え、商品探索がなされないことによる価格反応の大きさの違いを定量的に示すことができた。本研究の成果を取りまとめて、ヨーロッパ農業経済学会の報告にエントリーし、受理された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
データの構築が概ね終了し、分析作業を進めることができているため。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点ではシンプルな枠組みによる分析に留まっているが、空間的な依存性を組み込んだモデルによる推定や、eコマース等空間的近接性があまり問題にならない業態を追加するなどの検討を行う予定である。また、現在は貯蔵可能な食品を中心としているが、鶏卵や乳製品等の購買頻度がより多い品目を対象とした上で、同様の現象が生じているかの検討も行う予定である。
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Causes of Carryover |
データクレンジングの作業にかける時間と図書の購入による知識のキャッチアップにかける時間に多くを割いたため。また、予定していた国際学会報告等も新型コロナウイルスの状況でやや難しく、次年度に予定を先延ばししたため。次年度は国際学会での本研究課題関連報告が決定していることもあり、参加する予定である。
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